糞便移植で「がん」を治療する
かつて人類は人や動物の糞便を薬として利用していました。
紀元前1000年ごろのインドの医者たちは、胃腸薬としてウシの糞便が有効だと考えていたそうです。
また西暦300年代に作成された中国の医学書には、糞便を食べると食中毒や下痢を治せると記述されています。
さらに1500年代の明の皇帝は、腹痛を治すため、最高の料理人たちに糞尿を材料にしたゴールデンスープを作らせ、食したと記録されています。
このように、糞便は人類の歴史において、長い間、薬とされてきました。
しかし西洋医学の普及ににともない、糞便を食す治療法は「野蛮」「未開」「迷信」とされ、歴史の陰に消えていくかに思えました。
ですが、近年になって、糞便の効果が見直されるようなってきます。
健康な人の腸から取り出した糞便を患者に移植することで、さまざまな病気に対して効果があることがわかってきたからです。
そこでアメリカ、ピッツバーグ大学の研究者たちは、糞便移植の有効性をがん治療で確かめることにしました。
がん治療の対象としたのは「恐ろしいがん」として知られる黒色腫です。