アルコール中毒は「現実逃避」からはじまり「その場しのぎ」に移行する
人間が覚せい剤のとりこになるのは、快楽のためです。
覚せい剤には脳細胞に結合して、ドーパミンなどの快楽物質を強制的に分泌させる作用があり、人間は同じ快楽を得ようと覚せい剤を摂取しつづけます。
ですがアルコールは異なる2つの段階を経て常習化を起こしていました。
マウスや人間の脳には、不快感や緊急の状態を感知する警報システム(mOFC)と、警報システムからの情報を処理して、回避や逃亡をする必要があるかを見極める判断システム(dPAG)が存在します。
警報システムと判断システムが正常に動くことで、動物は危険な状態を回避することが可能になります。
しかし研究者たちが脳とアルコールとの関係を調べた結果、アルコールが真っ先に判断システムのはたらきを鈍らせていることがわかりました。
判断システムが鈍ると、マウスや人間は危機的な状態に対して反応することができなくなり、恐怖が増幅していきます。
結果、「現実逃避」を求めてアルコールを大量に摂取する強迫的な飲酒が発生します。
しかし、そうやってアルコールを頻繁に摂取し続けていると、デメリットがあることもわかりました。
判断システムのエラーは生物にとって致命的であるため、頻繁な飲酒で鈍らせ続けていると体が反発し、逆に判断システムの日常的な活性化を起こしていたのです。
判断システムの活性化は危機を回避する力を与えてくれますが、休みなしの臨戦態勢は精神を消耗させ、中毒になる前ならば耐えられていたストレスさえ我慢できずに、アルコールでしのごうとしはじめます。
結果、今度は「その場しのぎ」の衝動的なアルコール摂取が発生しました。
嫌な現実を忘れるためにアルコールを乱用していると、普通の生活のなかのストレスさえ耐えられなくなるという結果が得られたのです。