機械的刺激がカルシウムイオン濃度の変化につながる
鍵となったのはカルシウムイオンでした。
カルシウムイオンは外部からの刺激を細胞内部へと取り次ぐ、メッセンジャーとしてはたらくことが知られており、ホヤの変態にも大きくかかわっているのではないかと疑われていました。
しかしホヤの幼生は成体とは異なり、尾を振って泳ぐ能力があるために、付着の瞬間を含むカルシウムイオンの流れを観察することは困難でした。
そこで研究者たちはホヤの幼生を、細胞を接着させる効果を持った分子(ポリリジン)を用いてホヤの幼生をシャーレの底に固定。
そして付着器をガラス棒を使って刺激してみました。
すると、付着器においてカルシウムイオンの濃度が二段階にわけて上昇する様子が観察されました。
一段階目のカルシウムイオンの増加は、機械刺激の直後に、付着器と内部の腸にあたる組織で短い間みられました。
また、二段階目のイオン増加は一段階目と同じ場所(付着器と腸)でみられましたが、こちらは数分間の間、持続的に観察されました。
この結果は、ホヤの付着器に対する物理的な刺激か、細胞内部から核へとつながる複雑な反応の、最初の1手であることを示します。