外来種の水草と人間の廃棄物の組合せが原因だった
VM原因の解明は、25年間にわたる研究の積み重ねの結果です。
まず2005年までに科学者たちは、侵略的外来種である水草クロモ(学名:Hydrilla verticillata)が生育する湖のみでVMが広がっていると発見。
しかし、クロモだけが関連しているわけではないようでした。
それからしばらく後、2015年の研究で、クロモの表面積の95%を覆っている新しいシアノバクテリア「Aetokthonos hydrillicola(略称:A. hydricolla)」が原因である可能性が高いと発表されました。
ところが、A. hydricollaを鶏に与える実験では、鶏たちがVMになることはありませんでした。
そこでこの謎を解決するために薬理学者のブレインリンガー氏が立ち上がりました。
彼らの研究によって、欠けていた最後のピースである「臭化物」の存在が明らかにされたのです。
臭化物とは猛毒である臭素の化合物です。これは海水などに少量含まれているものですが、人間が除草剤や難燃剤を使用することで大量に放出されます。
研究チームはA. hydricollaが臭化物に晒されることで神経毒を生成すると突き止めました。
実際に、生成された神経毒を動物に与えると脳幹に液胞がつくられたとのこと。
つまり、25年間原因不明だった病気は、「外来種水草」と、その「バクテリア」、そして人間の排出した「臭化物」が複雑に関連しあった結果だったのです。
このことから、湖からクロモや臭化物を排除するなら、VM の被害を抑えられると考えられます。
今後研究チームは、VMの広がりを制御するベストな手段を見つけると共に、VMが人間に与える影響も研究していく予定です。