消えたはずの双子の細胞が睾丸で生きていた
全てのはじまりは、サムの母親が二卵性の双子を妊娠した時でした。
近年の研究により、単独の妊娠だと考えられていた事例の8分の1が多胎妊娠からはじまることが明らかになっています。
ですが1つを残して他は子宮に吸収されてしまうことが多いのです。
しかしサムの場合は異なりました。
胎児のとき、サムは何らかの方法で兄弟の細胞を吸収して、自分の一部にしていたのです。
結果、産まれてきたサムは、元々サムである体と、吸収されて消えたはずの兄弟の体が混在するキメラ体となったのです。
サムの肌が明確に色が違う暗い部分があったのは、その部分だけが吸収された兄弟の細胞に由来していたからです。
問題は、キメラ部分が肌だけではなく、精子を作る生殖細胞に及んでいた点にありました。
サムの生殖細胞がキメラになった結果、生産される精子もサム本人のものと、吸収された兄弟のものの2種類になってしまったのです。
そして運悪く、サムの妻の受精卵に最初に辿り着いた精子は、消滅したはずの兄弟の細胞に由来するものだったのです。
結果、サムの妻はこの世に存在しないはずのサムの兄弟の子供を身ごもり、出産することになります。