細胞は透明化するためにミトコンドリアを溶かしていた
ミトコンドリアや小胞体などの細胞小器官の処分にどんな遺伝子が働いていたのか?
実験を行った結果、ある種の脂質分解酵素(PLAAT)の遺伝子を破壊すると、ミトコンドリアなどの分解が起こらず、水晶体が白濁することが判明しました。
ミトコンドリアや小胞体の構造のほとんどは、細胞膜と似た膜状に折りたたまれた脂質の2重膜によって構成されており、脂質分解酵素によって分解することが可能です。
この結果は、水晶体を透明化させるのにミトコンドリアなどの細胞小器官が邪魔な存在であることを示すとともに、分解が細胞内の自食作用(オートファジー)ではなく酵素によって行われていることを示します。
さらに追加の実験により、脂質分解酵素が正常に働くには、分解直前に特殊なタンパク質(HSF4)によってあらかじめ膜に傷をつけていくことが重要であることも判明しました。
また同様の実験をマウスで行ったところ、マウスの水晶体でも脂質分解酵素(PLAAT)がミトコンドリアや小胞体の分解と透明化に必須であることがわかりました。
上の図が示すように、脂質分解酵素(PLAAT3)が欠如したマウスでは、水晶体が白濁して白内障のような状態になってしまいます。
この結果は水晶体の透明化には、脂質分解酵素によるミトコンドリアや小胞体などの細胞小器官の分解が、魚から哺乳類まで広範な脊椎動物において、必須であることを示します。