琥珀色の世界を作るゴーグル
今回の研究では、被験者の網膜に藻類の遺伝子を追加する実験と並行して、特別製のゴーグルが作成されました。
これは、藻類由来の遺伝子から作られる光感知タンパク質「ChrimsonR」が最も反応する光の波長が590nmの琥珀色であるからです。
そのため被験者の男性が良好な視界を得るには、周囲の光景を全て琥珀色に変換するゴーグルが必要だったのです。
手間がかかるのは事実ですが、結果は良好でした。
実験前、被験者の男性の視力は明暗をかろうじて区別できる程度でした。
しかし遺伝子治療を受けた目の上にゴーグルを装着したところ、ノートやカップといった物体の区別ができるようになっただけでなく、横断歩道に塗られた白い線も認識できるようになったのです。
この結果は、藻類由来の光感知タンパク質が人間の網膜細胞の中でも正常に機能しており、光(琥珀色)の刺激を視覚シグナルに変換できていることを示します。
既存の盲目からの回復手段は、視覚野に刺した電極に刺激を流したり、眼球に光ファイバーを入れなど、体に負担が大きな方法が主でした。
しかし今回の手法で患者が要求されるのは、ウイルスが入った注射とゴーグルだけとなり、非常に簡素であると言えます。