黄鉄鉱には原子レベルの「見えない金」が含まれていた
金属などの結晶の原子配列は、規則正しい格子状になっています。
ところが、この原子配列は必ずしも完全ではありません。一部原子が抜けていたり、余計な原子が含まれていたりするのです。
この不規則な状態を格子欠陥と呼び、黄鉄鉱にも格子欠陥があります。
そして今回、黄鉄鉱には「転位」という線状の格子欠陥のかたちで、「ナノスケールの金」が含まれていると判明しました。
つまり黄鉄鉱の中には、原子レベルの「見えない金」が存在していたのです。
フージャラス氏によると、「金の大きさは人間の髪の毛の幅の10万分の1なので、これを確認するにはアトムプローブ・トモグラフィーと呼ばれる特殊な技術が必要」とのこと。
また研究チームは、黄鉄鉱に含まれる金の抽出方法も検討し、選択浸出(英語:selective leaching)と呼ばれる方法で金だけを取り出せると分かりました。
これまで黄鉄鉱を金と勘違いし、高く評価してきた人は「愚者」とみなされてきました。
ところが実際、彼らは目に見えない金を入手しており、そこまで愚かではなかったのです。