厳しい教育は「虐待」と同じ悪影響を生む
子どもへの虐待やネグレクト、さらに施設への入所などは、その後の人生における不安や抑うつと深く関連しています。
深刻な虐待を経験した子どもは、感情のコントロールに重要な役割を果たす前頭前野と扁桃体が小さくなることがすでに知られています。
しかし今回の研究では、世間的に許容されている「厳しい教育」でも、同じ脳領域が小さくなることが明らかになったのです。
研究チームは今回、モントリオール大学の「子どもの心理・社会的不適応に関する研究ユニット(GRIP)」によって、2000年代初めから追跡観察されている子どもたちのデータを使用しました。
子どもたちは、出生直後から定期的にモニタリングされており、毎年、2歳〜9歳の間に、子どもの不安レベルと子育ての状況を評価しています。
このデータをもとに、子どもがどれだけ「厳しい教育(怒鳴ったり、揺すったり、叩くなど)」にさらされているかを分類。
のちに12歳〜16歳になった時に、子どもの不安レベルの再評価と、MRIによる脳の変化を調べました。
その結果、幼少期に過酷な教育を受け続けた子どもは、思春期になると、虐待を受けていないにもかかわらず、前頭前野と扁桃体が縮小していたのです。
研究主任のサブリナ・シュフラン氏は、次のように説明します。
「今回の研究成果は、重要かつ新しいものです。深刻な虐待には至らない過酷な育児習慣が、虐待行為の被害者に見られるのと同じく、脳サイズの減少につながるのは初めての事実でした。
しかし、重要なのは結果ではなく、厳しい教育が子どもの成長に悪影響を及ぼす可能性があることを、親や社会が理解することでしょう」
2019年の研究では、親の嘲笑的な態度が、子どもの感情コントロールを狂わせ、いじめの加害者にさせるリスクを高めることが分かっています。
親から子への影響は甚大である一方で、子は親を選べません。
子どもの健やかな成長を願うなら、周りの大人がより教育に敏感になるべきでしょう。