脳は腸内細菌の支配を受けている
近年の研究により「腸内細菌叢」の変化が脳機能や性格と密接にかかわっていることが明らかになってきました。
腸内細菌叢(ちょうないさいきんそう)とは多種多様な腸内細菌の集まりのとこです。
例えば、最近行われた研究では、腸内細菌を持たないマウスが「ボッチ」になることが示されると共に、代表的な乳酸菌であるE.フェカリス菌が社交性回復に効果があることが示されています。
腸内細菌が社交性といった複雑な精神機能にまで影響を与えるという結果は、脳と腸の関係が非常に深いことを示します。
そこで今回、スウェーデンのカロリンスカ研究所の研究者たちは、脳の老化と腸内細菌の関係を調べることにしました。
実験手法として用いられたのは近年盛んに用いられるようになった「糞便移植」です。
糞便の中は腸内細菌だけでなく、細菌が生息する環境(土壌に相当するもの)も含まれているため、腸内細菌叢を忠実に再現することが可能になります。
早速研究者たちは、若いマウス(生後3~4カ月)から糞便を採取し、老マウス(生後19~20カ月)に移植して認知機能の変化を調べました。
すると、加齢によって損なわれていた老マウスの認知機能(学習・記憶能力)が大幅に改善していることが判明します。
また認知機能の若返り効果は「老マウスの糞便」には存在せず「若いマウスの糞便」のみに存在することも示されました。
どうやら若いマウスの糞便には、脳にカツを入れるような特別な何かが存在するようです。
若いマウスの糞便はどのような仕組みで、老マウスの脳を若返らせていたのでしょうか?