学習と記憶にかかわる海馬が若返る
若いマウスの糞便によって起きた変化は脳のどこに影響を与えているか?
ヒントとなったのは、腸内で起きていた代謝物質の変化でした。
若いマウスの糞便を移植された老マウスの腸内では、脳を助ける物質が増加するだけでなく、プロピオン酸の合成速度や酢酸の分解速度の低下といった、免疫にかかわる物質の代謝も変化していたのです。
そこで研究者たちは、調査ターゲットを免疫と脳の海馬に定めました。
これまでの研究により、腸内細菌叢は免疫を調節する働きがあり、免疫は脳の海馬に影響を与えることが知られていたからです。
分析を行った結果、若いマウスの糞便移植を受けた老マウスでは、免疫能力が強化され、記憶と学習にかかわる脳の海馬の構造が若返っていたことが判明します。
この結果は、若いマウスの糞便移植は脳を助ける物質を直接増加させるだけでなく、免疫システムの強化を通じて、脳の海馬に間接的に働きかけて機能を増強させていたことを示します。