端数価格のデメリット

端数価格は商品そのものを「より安い」と認識させるため、消費者の購買意欲を向上させます。
「1万円」の商品よりも、1万円未満で購入できる「9800円」の商品が好まれるのです。
ところが研究チームによると、端数価格には質や量が向上する「アップグレード商品」の購入をためらわせるデメリット効果がある、と考えられるとのこと。
つまり、以下の値段設定の場合、
- ・「9800円の通常商品」と「1万1800円のアップグレード商品」が並ぶ
- ・「1万円の通常商品」と「1万2000円のアップグレード商品」が並ぶ
よりアップグレード商品が購入されやすいのは、後者だというのです。
この効果を確かめるため、チームはコーヒーやフェイスマスク、ストリーミングサービス、車、アパートなどを対象に、7つの異なる実験を行いました。
コーヒーのビッグサイズは購入させるには、スモールサイズを端数価格にすべきではない

ここでは、1つの実験をご紹介します。
オハイオ州立大学のキャンパス内にコーヒースタンドが2日間設置され、価格が定期的に変更されました。
価格は次の2パターンです。
- ①スモールサイズ:0.95ドル、ラージサイズ:1.20ドル
- ②スモールサイズ:1.00ドル、ラージサイズ:1.25ドル
①と②は1時間ごとに交互に変更され、それぞれラージサイズが購入された割合と全体の売り上げを比較しました。
その結果、①の価格設定では客の29%がラージサイズを購入しましたが、②の価格設定では、56%がラージサイズを購入。
これにより全体の売り上げも②の方が高くなりました。
端数価格にしない方がアップグレード商品の購入率が増加し、結果として売り上げの増加につながったのです。
ちなみに同様の効果は、その他の実験や、複数のアップグレードオプションがある「大きな買い物」でも発揮されたとのこと。
では、端数価格にしないことでアップグレード商品が購入されやすくなるのは、なぜでしょうか?
端数価格が「アップグレード商品をより高い」と思わせる
端数価格がアップグレード商品の購入を妨げるのは、「アップグレード商品をより高く感じさせるから」とのこと。
元値が9800円の場合、1万2000円のアップグレード商品を購入するには、「1万円の境界線」を超えなければいけません。
この「しきい」がアップグレード商品をより高く、遠いものに思わせるのです。

研究チームは、「州の境界を超えると目的地がより遠くに感じられる、という研究結果があります」と述べており、旅行などの他の分野でも同様の効果が見られると指摘。
確かに私たちも、実際の距離は変わらないとしても、県内よりも県外に出かける方が遠く、ハードルが高いように感じますね。
とはいえ、今回の効果が発生しないケースもあります。
例えば、高価な商品が対象の場合、小さな価格差では効果が薄いようです。
また「普段から頻繁にホテルを利用するする人」など、特定のサービスや商品に慣れ親しんでいる人には、効果がありません。
価格に精通している人は感覚に頼らないため、影響を受けることがないのです。
さて、今回の結果はアップグレード商品を扱う販売者にとって非常に有用な情報となるでしょう。
そして消費者にとっては、「値札を見たときの感覚に騙されないように」という注意喚起となりました。





















