顔の非対称性と相関する要因
研究から得られたデータを元に、テイラー氏は顔の非対称性と相関する要因がないかということを調べてみました。
彼女は、性別、人種などありえそうな要因を比較していきましたが、そこには顔の非対称性と相関する傾向は見つかりませんでした。
しかし、年齢との間にはかなり線形の相関性があるとわかったのです。
人の顔は、年齢の上昇とともに非対称性が大きくなっていたのです。
では、そのようなことが起きる原因はなんなのでしょうか?
テイラー氏は、この理由を次のように説明します。
「これは時間の経過とともに顔に作用する重力を含めた力のかかり方が均等ではないためです。
たとえば顔の片側の皮膚がたるんだからと言って、反対側の皮膚も同じようにたるむとは限りません
また顔を特徴づける骨格を含めた成長の仕方も、顔全体で均等ではありません」
時間が経てば経つほど、これらの作用は積み重なっていきます。
それが顔が年齢とともにどんどん非対称になっていく原因と考えられるのです。
そのため、この現象は顔だけに起きていることではないだろう、とテイラー氏は付け加えています。
この研究の発見は、いつか形成外科医を導くために役立つ可能性があります。
口唇口蓋裂(唇の一部に裂け目の現れる先天性異常。「兎口」などの俗称がある)のような、長期間に渡り複数の手術を必要とする障害の形成外科手術では、再建の最終目標をどこにおくかは個々の医師に任されています。
形成外科では、顔の形を整えたというゴールが医師によって異なっているのです。
この現状をもっとデータによって明確に判断できるようにすることが今回の研究の目標としていることなのです。
人の顔が持つ標準的な対称性、あるいは非対称性の母集団の範囲というものが特定できれば、形成外科治療のゴール地点を定めやすくなります。
もともとは形成外科の目標を定めるためにはじめられた研究ですが、そこからは加齢が人の顔に及ぼす、シワやたるみ以外の影響も明らかにしました。
赤ちゃんの顔が整っていて可愛いと感じるのは、綺麗な肌や無邪気な笑顔だけの要因ではなかったようです。