人の顔はどの程度対称なのか?
米ハーバード大学医学部のマウント・オーバーン病院で外科助教授を務めるヘレナ・テイラー氏は、形成外科手術の方針・手順を決定する方法について、研究を行っていました。
テイラー氏が考えていたのは、形成外科の手順をよりデータ駆動型(データを元にして意思決定すること)にするということでした。
形成外科では、外傷を負った人の顔を修復する再建外科という分野があります。
この手術の際に目標とされるのが、特徴を対称に近づけるように顔を再建するということです。
ただ、すべてを対称にすればいいというわけではありません。
この世のものは、ほとんどすべての面において、ある程度自然な非対称性が存在しています。
そのためテイラー氏は、形成外科医が達成するべき対称性とはどのような範囲なのか? ということを調査したいと考えたのです。
その過程でテイラー氏が気づいたのは、形成外科では損傷していない人の顔の情報というのが圧倒的に不足しているということでした。
「私たちには損傷を負い、顔の再建のためにやってきた子どもたちの画像がありました。
しかし、通常の人の顔が持つ非対称性の量については、データがないことが明らかになったのです」
そこでテイラー氏のチームは、3次元写真計測を使用して、生後4カ月から88歳までの191人のボランティア参加者の詳細な顔画像をレンダリングしました。
そして、そのデータから各参加者の顔の対称性を計算し、定量化するコンピュータアルゴリズムにかけたのです。