人の脳はロボットが相手でも視線を意識してしまう
実験の結果、ロボットが見つめ返してきたとき、被験者の選択自体に変化はありませんでしたが、一貫して反応時間がわずかに長くなるとわかりました。
逆に、iCubが視線をそらしたとき、被験者のゲーム中の反応は速くなったのです。
この結果について研究者は次のように語っています。
「相互注視後の被験者の反応の遅れは、相互注視が人に高い認知負荷を与えていることを示唆しています。
たとえば、iCubの考えについてより多くの推論をしてしまったり、視線刺激を抑制しようとした結果、気が散ってしまうなどです」
研究者によると、ここには注意を抑制しようとする脳波パターンが関連していたといいます。
つまり被験者は、相手がロボットであっても、見つめ返されるとゲームへの集中が乱れて反応が鈍くなり、視線をそらされるとゲームに集中しやすくなっていたのです。
面接の最中、面接官が書類のチェックなどで視線をそらしたとき、なんだか一瞬ホッとした経験はないでしょうか?
今回の結果は、これに近い状況を再現しているのかもしれません。
そして人間はその相手がロボットでも視線を無視することが難しく、思考のプロセスを邪魔されてしまうようです。
iCubというロボットが、人間の形状をおおまかに模倣していて、人として意識されるよう設計されていることを考えれば、これは驚くべきことではないかもしれません。
しかし、この結果は将来的に、より高度でインタラクティブ性の高いロボットを設計するとき影響を与えるデータとなる可能性があります。
今後ロボットはますます私たちの日常生活の中で存在感を増していくでしょう。
だからこそ、ロボットの技術的な面だけでなく、人とロボットの相互作用が人間の脳の処理にどのような影響を与えるかも理解することが重要となってくるのです。