精神的ストレスだけでもうつ状態になる?
「精神的なストレスが人をうつ病にする」という考え方は、現代では常識のように思えます。
しかしこの考えは、科学的に解明されたわけではありません。
なぜなら実験室で「身体的ストレス」と「精神的ストレス」を分けて調査するのは難しいからです。
一般的に病気の発症メカニズムを解明するには、まずマウスなどの動物が利用されます。
マウスに特定の刺激を与えて、それが脳や体にどのような影響を与えるか細かく調べるのです。
従来のうつ病の研究では、マウスを直接的に、慢性社会的敗北ストレス状態にしていました。
これは「体格が優れた攻撃的なマウス」と「体格の劣る弱いマウス」を同じ容器にいれて「イジメと敗北」を繰り返させるという方法によって行われます。
そしてイジメられたマウスは脳神経の活動が低下し、「引きこもり」や「好物に対する興味の喪失」などといった、一種の「うつ状態」が観察されるようになるのです。
しかしこのストレスの与え方には必ず暴力が伴うため、精神的ストレスだけの影響を判別できません。
そこで研究チームは、マウスが「精神的ストレスだけ」でうつ状態になるか実験することにしました。