仲間がイジメられているのを見ると、自分もうつ状態になる
研究チームは、精神的ストレスだけを与えるために、特殊な状況を作り出しました。
まず従来の実験のように、攻撃的なマウスに弱いマウスをイジメさせます。
そして観察対象となる別のマウスに、この「イジメ」をあえて目撃させるのです。
身体的なストレスは加わらないものの、絶えず仲間がイジメられている状況を見させることで精神的なストレスだけを与えていきました。
その結果マウスはイジメを目撃しているだけで、引きこもったり、快感が消失しといった「うつ状態」を発症しました。
またマウスの海馬では新生神経細胞の生存率が大幅に低下し、その影響は実験後4週間も継続すると判明。
つまり精神的ストレスだけでもマウスはうつ状態になったのです。
そして既存の抗うつ薬を投与することで、脳神経の状態や行動が改善されることも確認できました。
これらが動物実験で証明されたのは世界で初めてのことです。
将来的には、人を対象としたうつ病の発症メカニズムの解明や新たな抗うつ薬の開発につながると期待されています。
さらに今回の研究は、「私たちもマウスと同じことを経験するかも」と考えさせられます。
うつ病になった友人や家族を見ているだけで、自分もまたうつ病になってしまうのかもしれません。