理論上300万年間電流が流れ続ける回路
超電導という現象はそれを引き起こせる温度によって、いくつかの区切りがつけられています。
液体ヘリウムの温度(マイナス269℃)で超電導状態になるものを「低温超電導」。
液体窒素の温度(マイナス196℃)で超電導状態になるものは「高温超伝導」と呼びます。
こうした研究の中で、高温超伝導線材を使って、液体ヘリウムの温度まで冷やす(低温超電導を起こす)と、低温超電導線材を使った場合より、はるかに高い磁場を発生させるとわかりました。
そこで次世代兆候磁場NMR装置の実現のために、これを利用しようという動きが出ていますが、高温超伝導線材はもろくて取り扱いが難しいため、これで永久電流の閉回路を作るための超伝導接合を実現することが技術的に困難だったのです。
今回の研究グループは、そんな困難な問題を解決させ、2018年に高温超伝導接合を実装したMNR装置の開発に世界で初めて成功しました。
このとき装置を2日間安定させて観測を行い、理論上コイルを冷やし続ければ、外部電源無しで10万年間も電流を流し続けられる、ということを示したのです。
これだけでもすごい成果ですが、実際に長期運用できるかどうかは、この時点ではまだ明らかではありませんでした。
そこで、研究グループは、その後、実際に約2年間、この装置の永久電流運転を実施し、高温超伝導接合が長期間に渡って安定的な永久電流を維持できることを実証したのです。
2018年当時の測定では、1時間あたりの磁場の変化率は10億分の1というレベルでした。
しかし、これは時間とともに減少し、なんと2年目の測定では、1時間あたりの磁場の変化率は300億分の1になっていたのです。
これは電流を供給しなくても300万年も磁場を発生し続けることができることを意味しています。
これまで高温超伝導接合を実装したNMR装置では、数時間の永久電流運転の例しか報告されていません。
今回の成果は、年単位で永久電流の保持に成功した世界で最初の報告なのです。
永久電流が300万年というのは、なんともSF的なロマンを感じる研究です。
※この記事は2021年9月に公開したものを再掲載しています。
自分の考えだけど宇宙はー270度ぐらいって言われているから、ロケットでその高温超伝導接合を実装したNMR装置を打ち上げして太陽光発電を取り付けて、コイルの部分を冷やせば半永久的に宇宙に電気を保存できるってことかな?