色の表現と言語の進化論的解釈
なぜ言語によって、色表現の多彩さに違いがあるのか?
研究者たちは、色表現の多彩さは会話の中で求められるニーズに依存していると考えました。
たとえば、冒頭にあげた利休鼠は、草木を透かしてみた雨の色を表現したもので、灰色がかった深い緑色だとされています。
日本語の豊かな色彩感覚は、特定の雨の色に対して「利休鼠」と名前を付けるに至りました。
ただ残念なことに日本人以外は「利休鼠」の色合いを知る人は、多くはありません。
同様に日本では「こんがりきつね色になるまで焼いてください」という表現が登場しますが、きつね色という認識は日本語圏を超えるとバラバラになり、コミュニケーション上の齟齬が生じてしまいます。
ぎんぎつねのお料理 pic.twitter.com/nnwQffYk9H
— くまみね (@kumamine) November 21, 2016
そこで研究者たちは、日本語を含む130種類の言語がそれぞれ、色に対してどれほど多彩な表現を持っているかを定量化するアルゴリズムを開発しました。
結果、ある言語が特定の色合いに対して、どれほど多彩な表現(ニーズ)を持つかをスコア化することに成功します。
このアルゴリズムが算出するスコアを見れば、文化・言語・民族・国境・自然環境などの要因が、色表現のニーズ算出にどのように貢献しているかを知ることが可能になります。
しかしより興味深い結果は、データをまとめ上げた段階で明らかになりました。
データをまとめると、日本語やアラビア語といった特定の言語が持つ色表現のスコアではなく「人類全体」の種としての傾向が現れたからです。
人類は種として色表現にどのような傾向をもっているのか?
調査を行うと、人類種は赤や黄色などの暖色系の色が、他の色に比べて30倍も需要が高いということがわかりました。
これは人々の中で、暖色系の色に関するコミュニケーションの必要性が高いという、これまでの研究結果と一致しています。
一方で、茶色がかった緑とか、パステルカラーはほとんどの人が気にしていませんでした。
ではなぜ、暖色系の色の需要はそれほど高いのでしょうか?