言語が異なっても色の認識は一致している?
自分の見ている緑という色は、本当に他に人から見ても同じ緑なんだろうか?
なんてことは、中学生くらいになると誰でも考えることのようです。
同じようなことは言語学者も考えます。
50年以上前、人類学者のブレント・バーリンと言語学者のポール・ケイは、アメリカ人の話す「Green(グリーン)」という色は、フランス人が話す「vert(ヴェール)」と同じものなのか? ということを考えました。
そこで彼らは130の異なる言語コミュニティを尋ねて、330色のカラーチップ(下図A)を提示し、言語が表現する代表的な色に対応する色彩を決定する「World Color Survey」という大規模な研究を行ったのです。
すると、面白いことにまったく異なる言語であっても、ほぼ同じ様に色を分類する傾向があるとわかりました。
さらに「もっとも赤い色」や「もっとも緑と感じる色」などを尋ねると、どの言語でも焦点となる色は非常によく一致していたのです。
つまり、私がみている「緑」は他の人にとっても「緑」だったのです。
原因は生物学的なものでした。
言語や文化が違っても私たちの目の機能は同じです。そのためどの地域でも基本的な色の認識に違いがないと考えられるのです。
一方で、いくつか興味深い違いも明らかになりました。
言語が違うと特定の色合いに対する表現の多彩さが異なっていたのです。
そこで研究者たちはこの違いが、特定の色について、話しに登場させる頻度(ニーズ)に差があるせいなのでは? と考え、実証を試みました。