・ピサの斜塔は少なくとも4回の「大地震」に耐え、600年以上倒壊を免れている
・その理由が「土壌」と「建物」の抜群の相性にあることがわかる
1173年に着工を始め、1350年ごろに完成した「ピサの斜塔」。約5度もの傾斜をもつこの塔が、なぜ現代に至るまで、大きな地震に耐えながら生き残ってきたのでしょうか?
そんな素朴な疑問を解消すべく、16人のスペシャリストが立ち上がりました。ローマ第三大学のカミッロ・ヌーティ教授が率いるこのチームには、地震科学や建築工学のエキスパートが含まれています。
http://www.bris.ac.uk/news/2018/may/tower-of-pisa.html
1280年から、その地域は少なくとも4度の「大地震」に見舞われています。その「脆い」構造から考えれば、塔は「ふつうの地震」からでも深刻なダメージを受け、あるいは倒壊してしまうと考えられます。しかし驚くべきことに、塔はいまだに健在。多くの観光客を集めています。
このことは長年、エンジニアたちにとって大きな「謎」でした。そこで結集したのが、今回の地震科学や建築工学のエキスパートたちです。彼らが塔の構造情報を、地震学や地盤工学を用いて調査した結果、塔が今日まで生き残った理由は「地盤と構造物の動的相互作用 “Dynamic Soil-Structure Interaction”(DSSI)」によるものが大きいと結論づけられました。
つまり、「丈夫で高い」塔の構造と、「柔らかい」土壌の組み合わせが、地震の揺れを緩和していたことが考えられます。地震で建物が壊れるとき、地面の揺れに建物が共振してエネルギーが増大するといった現象が起きています。しかし、不安定で軟らかい地盤の上に一定の高さと丈夫さをもつ建造物があるときには、この共振が相殺される現象が起こります。
ピサの斜塔においてまさにこの現象が起きており、すなわち、その「土壌」と「建物」の相性が抜群によかったことから、塔が地面の揺れに大きな影響を受けなかったのです。
チームの一人であるブリストル大学のミロナキス教授は、「皮肉にも、塔の傾きの原因となった柔らかな土壌こそが、地震から塔自身を守ってきた立役者であるといえます」と述べています。
ピサの斜塔が「傾いた」原因であり、「倒れない」理由でもあるその柔らかい土壌。そのふつうの建物ではみることのできない絶妙な「不安定さ」が、いまも多くの観光客の心をつかんでいるのでしょう。
https://nazology.kusuguru.co.jp/archives/25700
via: Univerisity Of Bristol / translated & text by なかしー
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