頭蓋骨の薬は市場を大きくした後、科学に敗北する
大抵の場合、頭蓋骨や死体を用いた薬には、新鮮な材料が必要とされます。
そのためイギリスでは、頭蓋骨や死体の巨大な市場が形成されることになりました。
不謹慎だったとしても、大きな需要に対して「死体を商品として扱う企業」が生まれるのは当然の結果だと言えるでしょう。
彼らは新鮮な死体を戦場から薬屋へと流通させ、儲けていたのです。
そして頭蓋骨の需要はイギリス以外の国でも生じます。
特にドイツでは頭蓋骨の需要が大きく、アイルランドの戦場から死体を略奪し、そのままドイツに売るという商売が盛んに行われていました。
とはいえ、こうした頭蓋骨の商売も近代科学には勝てません。
1778年には頭蓋骨を売ったという記録が残っていますが、この商売は19世紀の時点で完全に失われたようです。
前進する解剖学と生理学が、頭蓋骨にまつわる迷信を見事に論破したのです。
さて現代でも、科学によってますます正確な理解が得られるようになっています。
私たちが当然のように信じていることでも、数百年後には「頭蓋骨の飲み薬」のように扱われているかもしれないのです。