「頭を摂取すれば、頭の病気が良くなる」という考えが広まる
頭蓋骨の薬は、16世紀から18世紀に至るまで、イギリスをはじめとするヨーロッパの貴族たちの間で一般的なものでした。
当時の医学は発展途上で、奇妙な治療法がたくさん存在していましたが、その中でも頭蓋骨を用いた治療法は特に人気があったようです。
例えば1643年に発表されたてんかん治療薬には、「暴力的な手段で殺された人間の頭蓋骨が3個」必要でした。
こうした医療が広まった背景には、「体のある部分を食べると、同じ部分が回復する」という思想に基づいています。
つまり「健康な人の頭を食べるなら、自分の頭の病気が治る」と考えられていたのです。
そしてその思想を元に作られた偽薬から、人々はいくらかの効果を体感していたかもしれません。
当時の人々は頭蓋骨の粉末をチョコレートやワイン、アヘンなどに混ぜていたので、一時的に気分が良くなった可能性が高いのです。
またプラセボ効果によって、思い込みが体調を本当に改善させたかもしれません。
さて人々は、頭蓋骨に対する間違った認識から、その効果を信じ、欲するようになりました。
こうした需要は市場の拡大と流通へとつながります。