なぜ猫はヒトにだけ話すのか──“操縦説”の真偽を探れ

猫好きなら一度は「このコは何を考えているんだろう?」と思ったことがあるでしょう。
研究では、野生の猫はほとんど互いに鳴き交わさず、成猫同士の「ニャー」は稀で、家猫だけが人に向けて多彩な鳴き声を使うことが知られています。
飼い猫が鳴き声で人の気を引く様子から、「猫の鳴き声は人間を思い通りに操るために進化した」との説が語られるほどです。
とはいえ、その“猫語”を人間が理解するのは容易ではありません。
鳴き声の音色や長さ、繰り返し方には微妙な違いがありますが、それが示す意味(「餌をくれ」「撫でてくれ」「不満だ」など)は経験から推測するしかなく、科学的に検証された「辞書」は存在しませんでした。
過去にも猫の気持ちを翻訳するスマホアプリが話題になったことがあります。
しかし過去の翻訳アプリは9~11程度の意図分類に限られ、約90%の精度しか出せなかったため、専門家から信頼性を疑問視されていました。
例えば「ごはんちょうだい」「怒ってる」など大まかなカテゴリに当てはめるだけで、専門家からは信頼性に疑問の声も上がっていたのです。
そこで今回アメリカの研究者は、より包括的で科学的に裏付けられた「猫語の辞書」を作り、それを使って猫の鳴き声を高度に分類・翻訳するAIの開発に挑みました。
Reznikov博士は以前から猫の発する音声を体系化する「FGC(FelineGlossaryClassification)」と呼ばれる分類法に取り組んでおり、今回はその最新版FGC2.3にもとづいて大規模なデータ収集とAIモデル訓練を行いました。
目標は40種類もの猫の声を識別できる汎用モデルを作り、人間向けにリアルタイム表示できる「猫語翻訳機」を実現することです。