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アルツハイマー病の原因物質が赤ちゃんの体では患者の3倍もあると判明

2025.07.01 22:30:32 Tuesday

スウェーデンのヨーテボリ大学(GU)で行われた研究により、アルツハイマー病の進行と密接に関連するとされてきた「リン酸化タウタンパク質」が、健康な新生児の血液中で患者の約3倍もの濃度で存在していることが明らかになりました。

このタンパク質は神経細胞にダメージを与えるアルツハイマー病の原因物質としての側面と、アルツハイマー病の進行を示す診断用のマーカーとしての側面を持つことが知られています。

ですが今回の研究では、この危険なタンパク質が新生児においては逆に神経細胞の成長や脳の正常な発達を支える「重要な役割」を果たしている可能性が示されています。

一体なぜ、同じ物質が人生の最初と最後で、まったく正反対の役割を果たしているのでしょうか?

研究内容の詳細は2025年6月7日に『Brain Communications』にて発表されました。

The potential dual role of tau phosphorylation: plasma phosphorylated-tau217 in newborns and Alzheimer’s disease https://doi.org/10.1093/braincomms/fcaf221

アルツハイマー病研究の常識が崩れるとき

リン酸化したタウタンパク質はアルツハイマー病の原因になり得ます
リン酸化したタウタンパク質はアルツハイマー病の原因になり得ます / Credit:福井大学 . アルツハイマー病の原因物質を抑える阻害薬を発見

私たちの脳は、記憶を作ったり、友達とおしゃべりしたり、音楽を楽しんだりと、人生のあらゆる場面を支えています。

その脳の健康を守るカギの一つが、「タウタンパク質」という小さな分子です。

普段のタウは、神経細胞の中で細胞の骨組みを安定させたり、情報伝達をスムーズにしたりして、私たちが当たり前の生活を送るために大切な役割を果たしています。

ところが年齢を重ね、アルツハイマー病が進むと、このタウタンパク質にリン酸という物質が過剰にくっつき、「リン酸化タウ(p-tau217)」という異常な状態に変化します。

この変化したリン酸化タウタンパク質は神経細胞の中で絡まった糸くずのような「タングル」を作り出し、脳の機能を次第に損なっていきます。

やがて記憶が薄れたり、日常生活が困難になったりするアルツハイマー病の症状が現れてしまうのです。

最近では、このリン酸化タウタンパク質の血液中の濃度を測ることが、アルツハイマー病の早期発見にも役立つとして注目されています。

つまり、このリン酸化タウタンパク質の数値が高いと、多くの場合、認知症の危険が迫っているサインだと考えられてきました。

しかし不思議なことに、胎児や生まれたばかりの赤ちゃんでも、このタウタンパク質のリン酸化が活発であることが動物実験から示されていました。

そこで、国際的な研究チームは人間も同じである可能性を調べることにしました。

もし人間の赤ちゃんにアルツハイマー病と深くかかわるリン酸化したタウタンパク質が多く存在する場合、リン酸化タウタンパク質の量がアルツハイマー病と関連するという既存の単純な予測が成り立たなくなる可能性もあります。

本当に人間の赤ちゃんでも、このタンパク質は多く存在したのでしょうか?

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