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アルツハイマー病の原因物質が赤ちゃんの体では患者の3倍もあると判明 (3/3)

2025.07.01 22:30:32 Tuesday

前ページ危険なリン酸化タウタンパク質、新生児では「患者の3倍」

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赤ちゃんの脳に隠された『アルツハイマー病攻略法』

赤ちゃんの脳に隠された『アルツハイマー病攻略法』
赤ちゃんの脳に隠された『アルツハイマー病攻略法』 / Credit:Canva

今回の研究によって、「アルツハイマー病の目印として恐れられてきたリン酸化タウタンパク質が、実は生まれたばかりの赤ちゃんの脳にとっては必要不可欠な存在である可能性」が示されました。

これまでは、リン酸化タウタンパク質が脳に存在することは悪い兆候と考えられていましたが、この研究でまったく別の側面が明らかになったのです。

つまり赤ちゃんの脳では、このリン酸化タウタンパク質は神経細胞の成長や新しい神経回路を築くために役立ち、正常な脳の発達を助けているというのです。

ところが不思議なことに、高齢者になると同じ物質が逆に神経細胞を傷つけ、アルツハイマー病の症状を引き起こします。

人生の最初と最後という、まったく異なる時期でまったく異なる役割を持つ同じタンパク質――研究者たちはこの矛盾に大きな謎と希望を見出しています。

赤ちゃんの脳がなぜこれほど大量のリン酸化タウタンパク質にさらされても健康でいられるのか、まだはっきりとは分かっていません。

研究チームは、新生児期の脳には、このタンパク質が凝集して悪影響を与えるのを防ぐ特別な仕組みが存在しているのではないかと考えています。

論文内で述べられている「予想」

  1. 新生児期におけるリン酸化タウが高レベルで存在するにもかかわらず凝集やタングル形成が見られないことは、成人とは異なる生理的メカニズムが働いている可能性。
  2. 胎児期および新生児期にリン酸化タウが神経細胞の成長や神経回路形成など、正常な脳の発達を支える役割を果たしている可能性。
  3. 新生児期においてリン酸化タウのレベルが高い状態が維持されるのは、キナーゼやホスファターゼ(リン酸化を調節する酵素)の成熟が進行しているためである可能性。

つまり赤ちゃんの体では成人と異なる調節機構が働いており、赤ちゃん特有の酵素バランスがリン酸化タウタンパク質が高濃度でも安全な状態で維持している可能性があるという予想です。

もしこの「赤ちゃんの脳を守る仕組み」を解き明かせれば、その方法を大人の脳でも再現することで、アルツハイマー病の進行を防ぐ新たな治療法が開発されるかもしれません。

実際にこの研究の中心的役割を担ったフェルナンド・ゴンザレス=オルティス氏は「新生児の脳がリン酸化タウタンパク質を安全にコントロールしている秘密が分かれば、アルツハイマー病を遅らせたり止めたりする画期的な治療が実現するかもしれない」と語っています。

さらに今回の研究は、アルツハイマー病研究の常識にも挑戦しています。

これまでアルツハイマー病では「アミロイドβ」という別のタンパク質が先に蓄積し、その影響でリン酸化タウタンパク質の異常が生じると考えられてきました。

ところが新生児にはアミロイドβが全く蓄積していないにもかかわらず、リン酸化タウタンパク質が極めて高いレベルで存在していることから、これまでのアミロイドβを起点とする考え方だけでは説明できない新たなメカニズムが示唆されたのです。

こうした結果から、リン酸化タウタンパク質の血液検査が臨床現場で普及しつつある中、「単に数値が高ければ悪い」という単純な判断を見直す必要性も指摘されています。

実際、血中リン酸化タウタンパク質検査は米国FDAにより既に承認されており、乳幼児期の正常な脳の発達過程としてこの数値が高くなるケースもあることを、医療関係者や研究者は認識しておく必要があります。

今回の発見は、赤ちゃんの脳に秘められた謎と可能性を新たに示しました。

年齢を重ねれば脳を傷つけることになる分子が、赤ちゃんにとっては脳の成長に欠かせない存在であるという意外な事実は、私たちが「成長」と「老化」という生命の本質について考え直す大きなきっかけを与えてくれるでしょう。

研究者たちは今後、この赤ちゃんの脳が持つ不思議な防御のメカニズムをさらに解明し、将来的にはアルツハイマー病をはじめとするさまざまな認知症への新たな治療法や予防策を生み出すことを期待しています。

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アルツハイマー病の原因物質が赤ちゃんの体では患者の3倍もあると判明 (3/3)のコメント

ゲスト

赤ちゃんに戻ろうとしているとかだったり…。
再度脳の発達をリセットして脳の機能をリフレッシュ。

ウィンディ

高齢者のウェルネス改善を研究している理学療法士です。赤ちゃんは寝たきりから始まって運動発達を遂げてピークのあと、そこからは赤ちゃんの運動発達の逆をたどって運動を失って高齢者が寝たきりになっていきます。
そこから考えると、このアルツハイマー原因物質の推移は身体活動と同じ推移で、興味深いです。パーキンソン病患者さんのほとんどがタンパク質不足で、生まれたての赤ちゃんもおそらく成長に追いつかずタンパク質不足だと考えられるので、ひょっとしてタンパク質の充足が関係している可能性もありますね。アルツハイマー患者の食事傾向が明らかではないので、なにか手がかりが見つかるといいなと、心から願っています^_^

ゲスト

赤ちゃんの脳には発生段階の無駄なニューロンがたくさんあってそれを排除するために
リン酸化タウタンパク質がたくさん必要だったなんて話にはならんでくれよ

ゲスト

そもそも原因ではなく、結果だったりしませんか?(因果関係ではなく相関関係)
例えば、赤ん坊は脳の発達の働き、健常者は不要、アルツハイマーは脳の機能を回復させるための働きをしているとか

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