涙が「誠実」に見える条件とは?
感情の涙は本来、言葉を超えた“誠実な感情表現”と考えられてきました。
なぜなら、意図的に涙を流すのは(多くの人にとっては)難しく、他人の助けを求める自然なサインとして働くからです。
しかし現実には、涙は「演技」や「同情を引く手段」とも見なされることがあります。
特に男女間の言い争いや法廷で罪逃れをしようとする場面など、何かを得ようとしているような状況では、涙はしばしば“嘘くさく”感じられてしまいます。
今回の研究では、カナダ、ノルウェー、ポーランド、南アフリカの参加者1893人に対し、涙を流している顔写真を提示し、その誠実さや支援意欲などを評価してもらいました。
写真の人物には、顔立ちに「温かみのある顔」や「冷たそうな顔」などの違いがあり、また、置かれた場面も「操作的(例:列に割り込もうとしている)」か「非操作的(例:順番をちゃんと待っている)」かが操作されていました。

その結果、涙の効果は一様ではなく、「顔が冷たそうに見える人」の涙の方が、むしろ誠実に感じられやすいことが明らかになったのです。
一方で、温かみのある顔の人が涙を見せた場合には、かえって“演技っぽく”感じられる傾向がありました。
さらに、涙を流している場面が「操作的」だと感じられた場合、全体として涙の信ぴょう性は下がり、「この人は泣いて他人を動かそうとしているのでは?」という印象を与えやすくなることも確認されました。