宇宙は約333億年後にビッグクランチで終わる――最新研究が示した最有力解
宇宙は約333億年後にビッグクランチで終わる――最新研究が示した最有力解 / Credit:川勝康弘 . Canva
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宇宙は約333億年後にビッグクランチで終わる――最新研究が示した最有力解

2025.10.03 19:00:32 Friday

アメリカのコーネル大学(Cornell University)などで行われた研究により、私たちの宇宙は約333億年の寿命があり、最後には「ビッグクランチ(宇宙の大収縮)」で終焉を迎える可能性があるとの最有力解を示されました。

現在宇宙の年齢は約138億年とされていますが、計算上はあと約200億年程度で宇宙が終わりに至ることになります。

また研究ではこれまでひたすら広がり続けてきた宇宙が、ちょうど「ゴムバンド」を引き伸ばして離したときのように元に戻ろうとする——そんなターニングポイントが約110億年後に訪れる可能性が示唆されたのです。

研究内容の詳細は2025年9月18日に『Journal of Cosmology and Astroparticle Physics』にて発表されました。

Data from dark-energy observatories indicate universe may ‘end in a big crunch’ at 33 billion years old https://phys.org/news/2025-10-dark-energy-observatories-universe-big.html
The lifespan of our universe https://doi.org/10.1088/1475-7516/2025/09/055

宇宙は本当に永遠に膨張するのか——最新観測が示す未来図

宇宙は約333億年後にビッグクランチで終わる――最新研究が示した最有力解
宇宙は約333億年後にビッグクランチで終わる――最新研究が示した最有力解 / Credit:Canva

宇宙にも寿命があるかもしれない──そう聞くと、途方もなく現実味のない話に感じるかもしれません。

なぜなら、私たちが普段抱いているイメージでは、宇宙は果てしなく広がっていて、時間的にも永遠に存在するものだと考えがちだからです。

しかし、宇宙科学の世界では、宇宙が本当に無限なのか、それともどこかで終わりがくるのかという疑問が、ずっと真剣に議論されてきました。

1990年代の終わり頃、「宇宙の膨張スピードが加速している」という驚きの観測結果が発表されました。

これが、宇宙は無限に広がり続けるというシナリオを強く後押ししたのです。

現在でも宇宙論(宇宙の成り立ちや未来を研究する科学)の分野では、この加速膨張する宇宙という考え方が標準的な理論になっています。

では、この宇宙の膨張を支えているものは何でしょうか?

実は、宇宙の未来を決めるカギとして「ダークエネルギー」と呼ばれる謎のエネルギーがあると考えられています。

ダークエネルギーは目に見えず、正体も分かっていませんが、宇宙空間そのものを押し広げる力として働いています。

私たちが見ている星や銀河などの普通の物質は、宇宙のエネルギー全体のわずか数%にすぎません。

宇宙の約68%は、このダークエネルギーが占めていると考えられています。

このダークエネルギーの強さを表すのが「宇宙定数」と呼ばれる値です。

宇宙定数はアインシュタインが約100年前に導入したもので、宇宙全体に一様に広がるエネルギーの強さを表します。

宇宙定数が正(プラス)の値なら、宇宙は永遠に膨張を続けます。

反対に、宇宙定数が負(マイナス)なら、宇宙はいつか膨張を止めて縮み始め、最終的には一点にまで収縮してしまうというシナリオになります。

この宇宙が一点にまで縮まる運命を「ビッグクランチ(大収縮)」と呼びます。

コラム:ビッグクランチとは何か?

宇宙の終わり方にはさまざまなシナリオが考えられていますが、その中で特にドラマチックな終末論のひとつが「ビッグクランチ(Big Crunch)」です。「クランチ(crunch)」という英語は「バリバリ砕く」「圧縮する」といった意味がありますが、この言葉通り、ビッグクランチとは宇宙が膨張をやめて再び縮み始め、最後には一点にまで押しつぶされてしまうシナリオを指します。
現在、私たちの宇宙は膨張し続けており、銀河同士は離れていっています。しかし、もし将来的にダークエネルギーという宇宙を広げる力が弱まり、宇宙の膨張速度が遅くなると、宇宙空間を構成する物質の重力が優位になってしまいます。そうなると、これまで膨らみ続けてきた宇宙は、ブランコが最高点で静止してから逆方向へ引き戻されるように、縮小へと転じる可能性があります。
収縮が始まると、離れていた銀河が次第に近づき、宇宙は再び密集状態に向かっていきます。やがて収縮速度が加速すると、宇宙空間の温度や密度はどんどん高くなり、最後にはビッグバンの時のような超高温・超高密度の極限状態へと逆戻りします。こうして宇宙は一点にまで凝縮され、すべての物質が押しつぶされて消滅するというのです。
あえて言うならば、ビッグクランチとは宇宙の最期を描くシナリオの中でも、ビッグバンの逆再生のような「壮大な巻き戻し再生」のイメージを持つものであり、宇宙論における最も劇的な仮説のひとつと言えるでしょう。

逆に、永遠に膨張が続き、宇宙全体が冷えきるシナリオは「ビッグフリーズ(宇宙の熱的死)」と呼ばれます。

ここ20年ほどは、多くの科学者が「宇宙定数は正であり、宇宙は永遠に膨張し続ける」と考えてきました。

しかし最近になって、この考え方を揺るがす新たな観測結果が報告され始めています。

「ダークエネルギーサーベイ(DES)」や「暗黒エネルギー分光装置(DESI)」といった最新のプロジェクトのデータが、それまで一定だと信じられてきたダークエネルギーが、実は時間とともに少しずつ変化している可能性を示したのです。

宇宙を押し広げている「エネルギー」という燃料が、徐々に弱くなっているかもしれないという兆候が出てきました。

研究チームの解析では、このダークエネルギーの変化は、統計的に「2.8〜4.2シグマ」という偶然では説明しにくい高い有意性を持つと報告されています。

この新しい発見は、宇宙を研究する科学者たちに大きな問いを投げかけました。

もし宇宙を広げる原動力であるダークエネルギーが今後さらに弱まっていくとすれば、宇宙は本当に永遠に膨張し続けるのでしょうか?

それとも、どこかで膨張が止まり、再び縮み始める未来もあり得るのでしょうか?

次ページ「膨張」から「収縮」へ――最新研究が示した宇宙のシナリオ

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