花粉症とADHDは似ている?
花粉の季節になると、鼻づまりやくしゃみが止まらなくなる人が増えますが、この症状が出ると、始終鼻がムズムズするせいで頭がぼんやりして集中できず、ミスが増えると感じる人は多いかもしれません。
実は、こうした状態はADHD(注意欠如・多動症)の症状とよく似ています。
ADHDは、集中力が続きにくい、気が散りやすい、衝動的に行動してしまうといった特徴を持つ神経発達症です。
一方、アレルギー性鼻炎は、花粉やダニ、ハウスダストなどに体の免疫システムが過剰反応し、鼻の粘膜に炎症が起きる病気です。
花粉症は季節性アレルギー性鼻炎に分類され、特定の季節だけに起こる症状ですが、ダニやハウスダストなどが原因になるアレルギー性鼻炎だとこの症状が一年中続きます。
この症状は鼻水やくしゃみだけでなく、鼻詰まりなどで夜の睡眠の質を大きく下げることでも知られています。
鼻炎の症状がひどくなると、日中の注意力が落ちたり、落ち着かない様子が目立ったりして、ADHDと見分けがつきにくくなることがあるのです。
最近はADHDかもしれないという人たちの話をよく耳にしますが、その中には、もしかすると鼻炎などで集中できない問題が誤認されているケースもあるかもしれません。
実際過去の小規模な研究でも、鼻炎や難聴のある子どもがADHDの診療を受ける割合が高いという報告はありました。
ただこうした報告は、現在のところ対象人数が少なく、十分な検証ができていませんでした。
そこで今回の研究は、韓国の全国民保険制度が持つデータから作成される小児患者サンプルを活用し、この疑問について大規模に調査してみることにしました。
研究チームは、6〜19歳の子どもと若者、各年約110万人規模のデータを2009〜2018年の10年間分まとめて横断的に分析しました。
ADHDかどうかは、医師の診断記録に加えて、メチルフェニデートやアトモキセチンといった治療薬が同年内に処方されているかで判定しました。
アレルギー性鼻炎については、同一年内の診断記録とともに、皮膚テストまたは特異的IgE抗体検査の実施記録で確認しました。
またこの研究は鼻炎だけでなく、難聴でも同様の問題が隠れいてる可能性を調査しています。
難聴は、診断記録とオージオメトリ(ABR、小児用・純音聴力検査)の結果を同年内に組み合わせて判定し、鼻炎との併発による影響も調べられました。
分析には「ロジスティック回帰」という統計手法が使われています。
これは、ある出来事(今回はADHD治療薬の処方を受けること)がどれくらい起こりやすいか(今回は鼻炎や難聴の人に対して)を数値(オッズ比)で示す方法です。
この数値が1より大きいほど、関連が強いことを意味します。
これを性別や年齢、家庭の経済状況(保険の種類で推定)といった背景要因を調整して検討しました。
さらに、診断基準を厳しくした追加分析も行い、大きな病院に限定しても結果が変わらないかを確認しました。
また年齢層(小学生・中高生)や性別ごとの違いも詳しく調べられています。