集中力を乱す意外なつながり
分析の結果、アレルギー性鼻炎のある子どもは、ADHD治療薬の処方を受けている割合が明らかに高いことがわかりました。
難聴がある子どもでも同じ傾向が見られ、鼻炎と難聴の両方がある場合は、関連の強さがさらに高まっていました。
性別や年齢によって関連の度合いは少し異なり、特に女児では難聴との関連が強い傾向も見られました。
具体的には、調整後のオッズ比は難聴とADHDで1.79、鼻炎とADHDで1.41、両方ある場合は2.10と見積もられています。
ただし、研究チームは「鼻炎がADHDを引き起こす」とは結論づけていません。
「鼻炎があるせいでADHDと誤診された」とも断定していません。
今回明らかになったのは、あくまで両者の「関連性」です。
因果関係や誤診の有無については、別の研究で確かめる必要があります。
とはいえ、両者に関連性が見られるのは確かです。
先にも述べたように、鼻炎では鼻づまりやくしゃみが、授業や仕事中の集中を妨げることがわかっています。何度も作業を中断するうちに、注意が続かず、落ち着きがないように見えてしまうのです。
さらに重要なのが、鼻詰まりやムズムズによる睡眠の質の低下です。夜にしっかり眠れないと、翌日は頭が重く、集中力が保ちにくくなります。
これはADHDの「不注意」症状と非常によく似た状態を起こします。
また最近の研究では、慢性的なアレルギー性の炎症が脳の働きに間接的な影響を及ぼす可能性も議論されていますが、この点はまだ仮説の段階です。
いずれにせよ、アレルギー性鼻炎の諸症状が、結果的にADHDと誤解されるような状態にしてしまうという可能性は、実際に花粉症や鼻炎の症状に悩まされている人には実感の持てる問題でしょう。
花粉症は日本でもかなり多くの人が悩まされている症状です。これは花粉の時期に落ち着きのなさや集中力の低下を軽視すべきではないことを示しています。
またADHDの診断を行う際にも、耳鼻科のチェックや睡眠状態の確認も併せて行うことの重要性を示してもいます。
もしかするとADHDと診断された人でも、鼻炎や睡眠を改善するだけで、問題が軽くなるケースも考えられるからです。
教室や職場に空気清浄機を設置するといった環境調整も、実は非常に重要なことなのかもしれません。
この研究はまだデータでの関連性を示すにとどまっているため、より明確なことを言うためには、さらなる調査が必要です。
また同じような傾向が、喘息やアトピー性皮膚炎など他の慢性疾患にも見られるかどうかも注目されています。
自分がADHDなのではないかと疑う人は近年増えているようですが、「集中できない」「落ち着かない」という症状の裏には、脳の問題だけでなく体の状態が関係している可能性もあります。
体のケアによって、思ったよりスムーズに集中力を取り戻せることがあるかもしれません。