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Credit: canva
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座礁したイルカの脳に「アルツハイマー」とよく似た病変を発見

2025.10.13 07:00:22 Monday

海ではしばしば、浅瀬に入り込んで出られなくなっているイルカや、浜辺に打ち上げられて死んでいるイルカが目撃されています。

なぜ泳ぎを得意とするイルカが座礁してしまうのか、この謎をめぐって多くの科学者たちが研究を続けてきました。

そして最近、米マイアミ大学(University of Miami)の研究チームが、フロリダの海で座礁したイルカの脳を詳しく調べたところ、「アルツハイマー病」と同じような病変が見つかったのです。

この発見は、人間だけでなく、海に生きる動物たちも認知症のリスクにさらされていることを示唆しています。

研究の詳細は2025年9月30日付で科学雑誌『Communication Biology』に掲載されました。

Do Stranded Dolphins Have Alzheimer’s Disease? https://brainchemistrylabs.org/news-blog/2025/10/1/do-stranded-dolphins-have-alzheimers-disease Brains of Stranded Dolphins Showed Signs of Alzheimer’s Disease https://www.sciencealert.com/brains-of-stranded-dolphins-showed-signs-of-alzheimers-disease
Alzheimer’s disease signatures in the brain transcriptome of Estuarine Dolphins https://doi.org/10.1038/s42003-025-08796-0

海に生きるイルカも認知症に?

イルカが座礁してしまう理由には、さまざまな仮説が提案されてきました。

そのひとつがの病気によって方向感覚や記憶を失ってしまう」という説です。

今回、フロリダ州インディアンリバーラグーンで、2010年から2019年の間に座礁したバンドウイルカ20頭を対象に、その脳を精密に解析する研究が行われました。

その結果、イルカの脳には、人間のアルツハイマー病でみられる異常なタンパク質の塊(アミロイド斑やタウタンパクの変性)が見つかりました。

また、遺伝子の働きにも、アルツハイマー病と同じような変化が生じていることが明らかになりました。

このような神経変性は、年齢を重ねたイルカにはもともとある程度見られるものですが、今回の研究では、その進行が特に早く、重症化している個体が多いことが特徴でした。

さらにチームは、イルカたちの脳から「2,4-ジアミノ酪酸(2,4-DAB)」という神経毒素を高濃度で検出しました。

これはシアノバクテリア(藍藻)や藻類の大発生――いわゆる「ブルーム」が起きている時期に座礁した個体で、特に多く含まれていました。

その濃度は、ブルームのない季節のイルカと比べて約2900倍にも達していたのです。

こうした結果から、海で発生する藻類やバクテリアのブルームが、有害な神経毒をイルカの体内に蓄積させ、脳の働きを蝕んでいる可能性が強く示唆されました。

次ページ気候変動が「イルカの認知症」を加速させる?

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