原始ブラックホールの内部には「別宇宙」が存在するとする新理論が発表
原始ブラックホールの内部には「別宇宙」が存在するとする新理論が発表 / Credit:川勝康弘
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原始ブラックホールの内部には「別宇宙」が存在するとする新理論が発表

2026.02.20 18:30:54 Friday

イタリアのパドヴァ大学(UNIPD)およびCERNなどで行われた研究によって、宇宙の大部分を占める「暗黒物質の正体が、なんと“別の宇宙のカケラ”かもしれないという新理論が打ち出されました。

また研究ではその別宇宙が原始ブラックホールと呼ばれる内部に存在している可能性が示されています。

研究者たちはこのアイデアを「DM from eternity(永遠から来た暗黒物質)」と名付けました。

もしこの理論が正しいなら、別宇宙は意外に身近な場所にあるのかもしれません。

研究内容の詳細は2026年2月10日にプレプリントサーバーである『arXiv』にて発表されました。

Dark Matter from Eternity https://doi.org/10.48550/arXiv.2602.08338

ブラックホールの中には別の宇宙がある?

「粒子を足す前に」宇宙のクセを疑う
「粒子を足す前に」宇宙のクセを疑う / Credit:川勝康弘

夜空の写真を眺めると、そこにはたくさんの星や銀河が写っています。

けれども、天文学者がそれらの動きを詳しく調べると、「見えている星の重さだけでは、どう考えても引力が足りない」という結果が何度も出てきました。

高速で回転する銀河がバラバラにならずにまとまっているには、目には見えない“余分な重さ”が必要なのです。

こうして名前だけ先に付けられたのが暗黒物質です。

しかし、その正体については、いまだに決着がついていません。

これまでの有力候補の一つは、「WIMP(ウィンプ:弱い力でしか他と反応しない新しい粒子)」のような、まだ見つかっていない素粒子でした。

加速器実験や地下実験で、その粒子を直接とらえようとする試みが世界中で行われていますが、いまのところ決定的な手がかりは得られていません。

そこで研究者たちは「理論に合うように新しい粒子を想定する前に、そもそも宇宙の膨張そのものが持つクセを、もっとちゃんと使ってみてはどうか」と考えました。

そのクセとは、インフレーションと呼ばれる時期にあります。

インフレーションは、宇宙誕生直後に宇宙がとてつもないスピードでふくらんだ、とする仮説です。

このとき、宇宙は完全に一定ではなく、場所ごとに少しずつ膨らみ方が違っていました。

その違いが、のちの銀河や星のタネになったと一般的には考えられています。

ところが、インフレーションにはもう一つ、あまり表に出てこない顔があります。

量子ゆらぎ(とても小さなレベルの偶然の揺れ)のせいで、一部の場所では「膨らみが止まらず、いつまでも続いてしまう」ことがありえます。

これが永遠インフレーションと呼ばれる状態です。

インフレーションのエンジン役である場のゆらぎが、通常の進み方より大きく暴れてしまうと、その場所では膨張が止まらないまま取り残されてしまうのです。

宇宙の特定の領域がインフレーションをずっと続けるわけです。

ではこうして残った永遠インフレーションの領域を、外側の「普通の宇宙」から眺めるとどう見えるでしょうか?

その有力候補のひとつが原始ブラックホールです。

これは、星の死骸としてできるブラックホールとはちがい、宇宙がまだとても若く、一面が熱いプラズマだったころに、密度が高すぎる場所がつぶれてできたブラックホールだと考えられています。

永遠に膨らみ続ける別宇宙のようなパッチが、私たちからは原始ブラックホールという真っ黒な点に見えてしまう、というわけです。

永遠にインフレーションを続ける「別の宇宙」があるなら、いつかブラックホールから飛び出てきて私たちの宇宙を飲み込んでしまうように、直感では思えるでしょう。

しかし「中の空間そのものが膨張する」と「その領域の境界が、外側の空間を押しのけて大きくなってくる」というのは、必ずしも同じではありません。

一般相対性理論では、中にいる観測者にとっては、空間がどんどん広がる「自分たちの宇宙」で、外にいる私たちにとっては、「地平線の中から何も出てこない黒い塊」というこの二つが矛盾せずに同時に成立し得るのです。

地平線の内側にどれくらいの“空間の体積”が折りたたまれているかは、ブラックホールの大きさとイコールで結べない複雑な問題であり、場合によっては、外から見える半径は変わらないのに、中で歩き回れる空間だけがどんどん増えていく、という時空の形が許されます。

では、エネルギー的にはどうなのでしょうか?

直感的には、「中でインフレーションが続いてエネルギーが増えれば、もっと巨大なブラックホールに育って、周りを飲み込みそうだ」と思ってしまいます。

しかし、ここで効いてくるのが、「外側から見たブラックホール」は、外側の世界のほうの方程式でほぼ決まってしまう、という点です。

中で起きているインフレーションは、あくまで「その塊の内部で物差しの伸び方がどうなっているか」を変えているだけで、外側の大きさや重さのパラメータを自由に更新するスイッチにはなれません。

もう少し別の視点から言えば、「膨張が周りを飲み込むかどうか」は、インフレーションの勢いと、重力による時空の曲がりのどちらが勝つかで決まります。

宇宙全体でインフレーションが起きているときは、膨張が支配的なので、どこまでいっても空間が伸ばされていきます。

しかし、永遠インフレーションの“島”が、小さな高エネルギーの泡のようなものとして低エネルギーの宇宙の中にぽつんと存在するときには、重力のほうが勝って、泡の周りにブラックホールの地平線が形成されます。

すると、その泡は外側の宇宙を押し広げる「侵略者」ではなく、自分自身の内側に閉じこもる「独立した宇宙」としてふるまい始めます。

外から見れば、それは単に「一定の大きさのブラックホールがそこにある」だけで、その大きさの分だけ空間が切り取られている、ということになります。

そこで今回の研究者たちは、「永遠に膨らみ続けるパッチが、実際にどれくらいの確率で生まれるのか」「その一つひとつがどれくらいの重さを持ち、宇宙全体でどれくらい集まるのか」「そのとき、どのような重力波(時空のさざ波)が出てくるのか」を、インフレーションの理論を使って具体的に計算しました。

そして本当に、宇宙にある物質の8割近くを占める暗黒物質を「別宇宙のカケラ」で説明できるのかどうかを探ろうとしたのです。

もしこれがうまくいくとしたら銀河のまわりを取り巻く見えない重さは、未知の粒子ではなく、ビッグバンで生まれそこねた別宇宙の破片だった、という物語が浮かび上がります。

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