光子は「切ろう」とすると無限に増える――でも外からは1個に見えた
光子は「切ろう」とすると無限に増える――でも外からは1個に見えた / Credit:Canva
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光子は「切ろう」とすると無限に増える――でも外からは1個に見えた

2026.06.01 19:30:32 Monday

ギリシャ神話に、ヒュドラという怪物が登場します。首を一本切り落とすと、その切り口から二本の首が生えてくる、たいへん厄介な相手です。

ところが光のつぶ(光子)の世界では、それよりもっと奇妙なことが起こるようなのです。

ノルウェーのオスロ大学(UiO)の研究チームによれば、光のつぶの端を少しだけ切り取ろうとすると、首が二本どころか、理想的な切り方をすれば、なんと無限にたくさんのつぶが生まれ得ることが、理論的に示されました。

ところが、本当に不思議なのはここからでした。無限のつぶがざわめいているはずなのに、切れ目の左右をのぞいてみると、片側には「つぶが1個」、反対側には「空っぽの真空」。

まるで何も増えていない、ありふれた景色が広がっていたのです。

無限に湧いたはずのつぶは、いったいどこへ消えたのでしょうか?

そして、そもそも割れないはずの光から、なぜつぶが生まれるのでしょうか?

研究内容の詳細を示した論文は2026年5月18日に『Physical Review Letters』に受理されました。

Truncated photon https://doi.org/10.1103/94pm-hp34

割れないはずの光を、切るということ

割れないはずの光を、切るということ
割れないはずの光を、切るということ / Credit: Rukan, Gulla & Skaar (2026), arXiv:2510.21636 / CC BY 4.0

世の中のものは、どこまでも細かく分けていけそうに思えます。ケーキを半分に、その半分をまた半分に。包丁さえあれば、いくらでも続けられそうです。

けれど、ものをどんどん細かくしていくと、最後には「これ以上は分けられない」という、究極のつぶにたどりつきます。それが素粒子です。自然界をかたちづくる、いちばん基本の部品。それ以上は、どんな刃物を使っても割れません。

たとえば、原子の中心にある陽子。これは3つのクォークというつぶからできています。けれど、そのクォークを取り出してさらに半分に、というわけにはいきません。クォークは、もうそれ以上は分けられない。これが素粒子です。

そして、のつぶ——光子も、この素粒子の仲間です。つまり光のつぶは、原理からして「半分に割る」ことができないのです。

ここで、ひとつ引っかかります。

「割れないなら、そもそも切りようがないのでは?」

もっともな疑問です。ふつう「切る」といえば、1個のものを刃物で2つに割ること。割れないものを切る、というのは、言葉からして矛盾しているように聞こえます。

ところが、ここで光ならではの不思議な性質が効いてきます。

私たちはつい、光のつぶを、空中にぽつんと浮かぶ小さなビー玉のように思い描いてしまいます。けれど、実際はそうではありません。

量子の世界では、光は「つぶ」であると同時に、「波」でもあります。波だということは、一点にぎゅっと固まってはいない、ということです。

水面に立った波が、ひとところにとどまらず、すうっと横に伸びていくのを思い浮かべてください。

光のつぶも、あんなふうに空間へうっすらと広がった、細長い帯として、光の速さで流れているのです。

帯ならば、その全部を真っ二つにしなくても、流れていく途中で「一部分だけ」を狙うことができそうです。

たとえば、帯が通り過ぎるところに、すばやくオン・オフを切り替えられる鏡——いわば光のシャッター——を置く。

すると、帯のうち鏡に当たった一部分だけが、はね返されます。

つぶを真っ二つに割るのではありません。

広がった帯の一部に鏡を当て、そこだけを断つ——そういうイメージです。

割れないはずのものでも、こうすれば「一部を切り取る」ことができるはずです。

では、帯の一部をさえぎったら、残りはどうなるのでしょうか。

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