トンボの空中戦を高速カメラで撮影し、ルールを解き明かす
オスのトンボは、池や小川の周辺に繁殖のための縄張りをつくり、侵入してきたライバルと激しい空中戦(追跡戦)を繰り広げます。
しかし、オス同士の追跡は獲物を捕らえるときの飛び方とは目的が異なるようです。
捕食では、追う側と逃げる側の役割がはっきり分かれ、トンボは獲物の進行方向を先読みするように飛んで接触を目指します。
これに対し、今回記録された小型の赤いトンボTrithemis auroraの空中戦では、オス同士の直接接触は観察されませんでした。
そこで研究チームは、トンボが空中戦で何を達成しようとしているのか、また、瞬間ごとの飛行をどのようなルールで調整しているのかを調べました。
研究チームは台湾の台北市立動物園で、2台の同期した高速カメラを使ってオス同士の争いを毎秒250コマで撮影。
2方向から撮影した映像を組み合わせることで、2匹の位置や動きを三次元で復元しています。
解析には、オス同士の空中戦から得られた102組のペア軌跡、計204本が使われました。
さらに比較のため、小さな獲物を捕らえる9本の飛行軌跡も復元しました。
研究者たちは速度や加速度、旋回の速さに加え、それぞれのトンボから相手がどの方向に見えていたかを計算しました。
また、円形の経路を動く人工標的を追わせ、距離によって速度をどう調整するかを調べるとともに、単純な追跡ルールを組み込んだシミュレーションも行っています。

その結果、空中戦の中心は、「相手を前方に捉えながら有利な後方位置を取り合うこと」だと考えられました。
そして役割交代やループ、下降する螺旋飛行の少なくとも一部は、複雑な専用戦術を仮定しなくても、視覚による追跡と速度調整から説明できることが示されました。
より詳細な結果を次項で見ていきます。





























