複雑な文法は人間と動物を分ける「境界線」とされてきた

私たちは毎日、単語をただ並べるのではなく、決まりに沿って組み立てて話しています。
この文の組み立て方の決まりが、いわゆる文法(統語)です。
そして複雑な文法こそが、人間の言葉と動物のコミュニケーションを分ける境界線だと広く考えられてきました。
もちろん、動物の鳴き声にも文法らしき構造が見つかることはあります。
ただしそれは鳴き声の中にぽつぽつ現れる程度で、その決まりもせいぜい「正規」と呼ばれる単純な段階どまりだとされてきました。
一方の人間の言葉は、それより上の「超正規」な文法、つまり少なくとも「文脈自由」と呼ばれる段階の計算の複雑さを持つと考えられています。
正規の段階の決まりは、「この音の次にはこの音」と前から順番につないでいくようなイメージです。
これに対して超正規の段階では、ある構造の中に同じ種類の構造を入れ子のように埋め込むことができます。
たとえば「私が昨日見た犬が吠えた」という文では、「犬が吠えた」の中に「私が昨日見た」という別の文がすっぽり収まっています。
このように決まりが自分自身を中に含み込める性質は「再帰」と呼ばれます。
では、人間以外の霊長類の鳴き声は、本当に単純な段階どまりなのでしょうか。
研究チームはこれを確かめるため、確率的な形式文法(記号の並べ方の決まりを数学的に表したもの)について「尤度(ゆうど)」を求める新しい方法を使いました。
尤度とは、あるデータがある決まりから生まれたとした時の「もっともらしさ」を表す数値です。
これを使えば、鳴き声の並びをどの段階の決まりで説明するのが一番それらしいかを比べられるわけです。
調べたのは、系統的に離れた3種の霊長類、ボノボ、オリーブコロブス、コモンマーモセットの鳴き声の並びです。






















