逆境は子どもの発達を「傷つけるだけ」なのか

子ども時代の逆境とは、育児放棄や家庭・地域での暴力、家庭の不安定さなどをまとめて呼ぶ言葉です。
子ども時代に逆境を経験した人とそうでない人の間には、心の健康に大きな差があることがくり返し示されてきました。たとえば、幼いころに複数の逆境を経験した子どもは、15歳の時点で不安や落ち込みを抱えやすいとされています。
以前ナゾロジーではこういう記事も紹介しています(「思春期に孤独だった人」ほど大人になって不安定なものとは)
こうした中で主流となっているのが「欠損モデル(逆境は脳の発達を傷つけるだけだという考え方)」です。
恵まれない環境の子どもが、さまざまな知能テストで平均して低い点を取ることも、この考えの裏付けとされてきました。
しかし米ユタ大学で心理学と人類学を教えるブルース・エリス氏は、この見方は進化の視点から見ると筋が通らないと指摘します。
ストレスは発達を傷つけるというより、厳しい環境で役立つ方向へ発達を導くはずだ、というのです。
人類の歴史では暴力や飢え、物の足りなさがくり返し起きており、そうした困難に適応する力は人間らしさに大きく関わってきたと考えられています。
自身も貧困の中で育った米デンバー大学の発達心理学者メリア・デジョセフ氏も、「逆境にもかかわらず」ではなく「逆境だからこそ」身につく力に目を向けています。
ただし彼女は、貧困の中で育つのはとても大変で、望ましくない結果につながるリスクも高めると強調しています。
困難を美化するのではなく、全体像をとらえることがねらいなのです。
心理学者たちは当初、こうした力を「隠れた才能」と呼びました。




















