赤い光を朝に3分目に当てるだけで1週間視力がアップすると判明!
年齢による視覚の低下といえば老眼が思い浮かぶかたが多いかと思います。
ですが実は網膜の感度低下のほうが、より深刻な問題と言えるでしょう。
老眼はメガネをかけたり目薬をさしたりすれば対処可能ですが、網膜の感度が低下すると、色のコントラストをはじめとする「色や輪郭の感度」が全体的に低下し、世界から彩が失われ、淡くぼやけていきます。
網膜感度の低下が起きる主な原因は、ミトコンドリアの性能低下です。
ミトコンドリアは細胞の酸素呼吸が行われる「発電所」とも言うべき存在であり、高いエネルギー需要がある網膜には特に多く存在します。
しかし活発なエネルギー生産の代償として、網膜は他の臓器よりも早く老化が進み、気付かぬうちに出力が70%も減少してしまうことが知られています。
エネルギー不足に陥った視覚細胞は、正常な視覚情報の「感受・増幅・伝達」ができなくなり、色彩のコントラストを区別する能力をはじめ、視力全般が低下していきます
そこでイギリス、ロンドン大学のシンマー氏は、このミトコンドリアのエネルギー不足をなんとか補う方法を考案しました。
その方法とはズバリ、赤色の光を使ったミトコンドリアの充電です。
近年、ワイヤレス形式の電磁波を使った充電方法が普及しています。
このワイヤレス充電では、充電器が発した電磁波をバッテリーが吸収することで電力に変換し、充電することが可能です。
同様に、ミトコンドリアは波長が650nm~1000nmの電磁波を吸収することが知られています。
650nm~1000nmの電磁波は赤色の可視光と赤外線の一部を含む波長です。
そこで研究者たちは、赤い光を使ってミトコンドリアを充電できると考え、今年の初めから人間の被験者を使った実験を行ってきました。
結果、実験は大成功となります。
電磁波がミトコンドリアに吸収されると、ミトコンドリア内部の分子活動が活発になり、ミトコンドリアが生産するエネルギーを増加。
網膜の細胞にエネルギーが供給され、参加者の視力が大幅に回復したのです。
そこで今回、同じ研究チームはより洗練されたミトコンドリア充電法の開発に乗り出しました。
近年においてミトコンドリアの可視光を用いた充電方法はさまざまな動物実験でも有用性が報告されはじめていたからです。
その中でも研究者たちが特に目をつけたのはショウジョウバエを使った実験で示された「網膜のミトコンドリアは主に朝方にエネルギーを生産する」という事実でした。
研究者たちは早速被験者たちを集めて、赤色の光(670nm・8mW /cm2)を朝に3分間目にあてたグループと夕方に3分間あてたグループの視力を調査しました。
ショウジョウバエで得られた実験結果を人間に当てはめることに疑問を感じる人がいるかもしれませんが、実はショウジョウバエと人間の目の根幹となるシステムは同じなのです。
結果、朝に赤い光を3分目にあびたひとは、色のコントラストテストにおいて成績が12~17%上昇し、1週間後も効果は続いたままでした。
一方で、夕方に赤い光を3分目に浴びた人たちは、直後のテストでも成績に大きな違いがありませんでした。
この結果は、人間の網膜のミトコンドリアもハエと同じく朝に集中的にエネルギーを作るため、朝に赤い光をあびることが視力回復に最も効果的であることとを示します。