尿自体は本当に無菌なのか?
そもそも、尿は無菌という考え方はどこから登場したのでしょうか?
これは何も一般の人々が勝手に言いだした考えではありません。医師たちも、血液を腎臓でろ過することで作られる尿は排泄されるまでは無菌であると考えていたのです。
イリノイ州ロヨラ大学医療センターの泌尿器科医、エリザベス・ミューラー博士もかつては尿には細菌が存在しないと考えていた一人です。
しかし、ミューラー博士の同僚でもある微生物学教授、アラン・ウルフ氏は泌尿器科医のこの考えを聞いて驚いたと話します。
「膀胱は尿道によって外部と繋がっているのに、一体どんな力が細菌の侵入を防いでいるというんだ?」
そこでミューラー博士とウルフ氏らは、尿は無菌であるという通説を打ち破るべきであると考え、調査を行いました。
85種もの細菌が見つかった
ロヨラ大学の研究チームは、65人の女性を対象に、単純な尿検査ではなく、カテーテルや注射で直接膀胱から採取した尿に最新の技術を用いて、細菌が存在するかを調査しました。
その結果、85種もの細菌が見つかったのです。また、その多くは腸内や膣内にもよく見られる細菌でした。
人体には数多くの微生物(細菌・真菌・ウイルスなど)が共生しており、こうした集団を微生物叢(マイクロバイオーム)と呼びます。
ロヨラ大が発見した尿路に存在するマイクロバイオームについては、現在は「ウロバイオーム(urobiome)」と呼ばれています。
これらのウロバイオームは、尿を培養する一般的な検査では、それまで確認した報告はほとんどありませんでした。
ほとんどという言い方が引っかかる方もいるかもしれません。
実はロヨラ大の研究が、初めて膀胱内の尿の細菌を発見したのではありません。この研究は、過去に報告された研究の再現実験なのです。