口腔内の菌を一層する従来のマウスウォッシュに対抗するものは?

私たちの口の中には、数百種類以上の微生物が共生しています。
その中には「善玉菌」と呼ばれる有益な菌と、「悪玉菌」とされる病原性のある菌が存在します。
善玉菌は、他の病原菌の侵入を防いだり、口腔内の酸性度を調整する働きがあります。
一方、いくつかの悪玉菌は、歯周病や炎症の原因となり、体内への感染リスクを高めるとされています。
マウスウォッシュを用いるなら、こうした問題児たちを簡単に殺菌できます。
ところが、市販の多くのマウスウォッシュは「広域殺菌作用」を特徴としており、善悪の区別なく、口腔内の細菌を一掃してしまう傾向があります。
特に、抗菌剤としてよく使われるクロルヘキシジン(PerioGardなど)やリステリンは、強力な殺菌力を持ちますが、同時に口腔内のバランスを崩してしまう可能性もあります。
過去の研究では、こうしたマウスウォッシュの長期使用が口腔内の善玉菌を減らし、唾液のpHを下げ、歯の脱灰リスクを高めることさえ示唆されています。
さらには、口腔内の微生物環境の乱れが、糖尿病や心血管疾患、さらには認知症リスクにも関連するという報告もあり、歯磨き以上に慎重な使用が求められる製品といえるでしょう。

今回、ラトガース大学の研究チームが注目したのは、「善玉菌を守りながら悪玉菌だけを減らす」という選択的なアプローチでした。
彼らはその「ターゲットを絞った殺菌効果」が市販のハーブ系マウスウォッシュ「StellaLife VEGA Oral Rinse(本記事ではステラライフと呼ぶ)」にあると考えました。
なお、米国食品医薬品局(FDA)による安全性や効果の承認は受けていませんが、製品側ではFDAの”cGMP(現行適正製造基準)”に準拠して製造していると主張しています。
研究では、5種類の代表的な口腔内細菌を対象に、ステラライフとクロルヘキシジン、リステリン、そして対照としての生理食塩水(PBS)の効果を比較しました。
細菌は単独での培養(プランクトン状態)だけでなく、4種混合のバイオフィルム、さらには実際の歯周病患者由来の80種以上の多菌種バイオフィルムで評価されました。
また、ヒト歯肉細胞を用いた3Dスフェロイドモデルで、それぞれの洗口液の細胞毒性も調べられました。