恐竜はいかに「カラフルな色」を手にしたのか
恐竜の体色については、現存する鳥類と恐竜の共通祖先である、古代の主竜類(Archosauria)の皮膚や組織の色にかんする広範な研究結果がヒントになります。
研究チームは、それと合わせ、カメやワニおよび4000種以上の鳥類を含む、恐竜の現存する親戚に明るい体色があるかどうかを分析しました。
本調査で調べられた色は、鳥類が食物から抽出した赤、オレンジ、黄色といったカラフルな色素の一種である「カロテノイド」に由来するものです。
カロテノイドは、褐色や黒色素のように化石化しないため、恐竜の体色の手がかりを探すには、生きている生物を調べる必要があります。
調査対象となった計4022種の鳥類のうち、約54%が鮮やかな色をしており、そのうちの86%は、羽毛以外の部位だけで明るい色を表現していました。
これらの結果から、共通祖先(古代の主竜類)の体に明るい色が存在する確率は50%であると推定されました。
これは、古代の主竜類の皮膚やクチバシ、うろこの一部に対するパーセンテージです。
その一方で、ツメや羽毛に明色があった可能性は0%で、これは他の先行研究と一致しています。
本研究では、カロテノイドを多く含む食生活(植物や無脊椎動物)との関連性も調べられており、チームは、カロテノイドを多く含む食生活をしている現代の鳥類は、肉食の鳥よりも色鮮やかである可能性が高いことを発見しました。
さらに、植物食の鳥は、肉食や雑食の鳥に比べて、体のより多くの場所で鮮やかな色を表現していることも判明しています。
これは、タカやワシに比べて、オウムやキジの方が色鮮やかであることからも分かります。
しかし、肉食のイメージが強い恐竜が、なぜ明るい色を持ち得るでしょうのか。
これについて、同チームのジュリア・クラーク(Julia Clarke)氏は、次のように説明します。
「初期の恐竜はポニーくらいのサイズで、大型の脊椎動物を食べていました。
しかし、時代を経るにつれて様々なグループが、植物主体あるいは動物・昆虫・植物を混ぜた雑食性に移行しました。
この変化により、恐竜たちはカロテノイドを取り込み、皮膚やクチバシの一部に明るい色を持った可能性が高いです」
研究主任のサラ・デイビス(Sarah Davis)氏は「絶滅した恐竜たちも、鳥と同じように、脚やクチバシ、目の周りにカラフルな色をつけていたと考えられる」と話します。
また、本研究の成果は、現代の鳥類に見られる色彩の起源についても、新たな知見を与えています。
プリンストン大学のメアリー・キャスウェル・ストッダード(Mary Caswell Stoddard)氏は、こう述べます。
「鳥類の色には、羽毛以外にも多くの特徴があります。例えば、オニオオハシが持つ鮮やかなオレンジイエローのクチバシを思い浮かべてみてください。
今回の研究では、羽毛だけでなく、鳥類やその近縁種のクチバシ、および皮膚にあるカロテノイド由来の色彩の進化の歴史が明らかになりました」
鳥たちに見られる鮮やかな色は、主竜類から恐竜を経て、脈々を受け継がれてきたのかもしれません。