アシカは作業に応じてヒゲの動かし方を変更する
研究対象にアシカが選ばれたのは、彼らのヒゲがマウスなどの小型哺乳類に比べて太くて長く、計測しやすいというメリットがあったからです。
さらにアシカやアザラシ、セイウチなどの鰭脚類(ききゃくるい)は、哺乳類の中でも最も敏感なヒゲをもっています。
そして今回の研究では、目隠しをした1頭のアシカに「3つのサンプルから指定した魚のおもちゃを見つける」という課題を与えました。
例えばアシカは、大中小のサイズからヒゲを使って中サイズを選ぶよう求められました。
また別のケースでは、おもちゃの鱗サイズが大中小で分けられたもの(つまり表面の質感が異なっているもの)が提供され、そこから中サイズの鱗のおもちゃを選ぶよう求められています。
そしてこれらの課題を何千回と繰り返し、ヒゲと頭の動きをビデオで追跡しました。
その結果、それぞれの課題に特化したヒゲの動きが観察されました。
大きさを判断する課題では、おもちゃのアウトラインをなぞるようにヒゲを動かしており、表面の質感を判断する課題では、ヒゲで表面を掃くような動きを見せたのです。
このように、与えられた課題ごとにヒゲの動かし方を変えることで、効率的な情報収集が可能になります。
その結果、アシカはほぼすべてのテストで正しい魚のおもちゃを発見でき、その判断も0.5秒以内だったとのこと。
今回の研究結果から、アシカのヒゲは人間の指先と同じレベルで動かせると分かりました。
現在チームは、カワウソなどの他の哺乳類にも同様の能力があるか調査しています。