なぜパンダは痩せないのか?
ジャイアントパンダ(以下、パンダ)は食肉目クマ科の動物でありながら、食の99%以上を竹に依存する珍しい動物です。
肉食動物の消化管は短く、肉を消化するのに適しているため、パンダが竹を効率よく処理するのはかなり困難です。
そこでパンダは、腸内細菌が竹の葉っぱ(笹)や芽(タケノコ)の細胞を分解し、中の栄養素を利用できるようにしています。
野生のパンダは、1年のうち8カ月間、笹を食べています。笹は栄養価に乏しく、脂肪分もほとんど含まれていません。
しかし、晩春〜初夏にかけては、栄養価の高い新芽(タケノコ)を食べて、体重を増やすことができます。
これまでの研究で、パンダの腸内細菌叢は、この「笹シーズン」と「タケノコシーズン」で変化することが分かっています。
CAS動物学研究所のチームは、中国中央部の秦嶺(しんれい)山脈に生息する野生のパンダを数十年にわたって調査してきました。
チームは今回、8頭のパンダから、笹シーズンの糞便(14サンプル)とタケノコシーズンの糞便(15サンプル)を採取し、そこに含まれる腸内細菌を分析。
すると、2つの季節で腸内細菌のグループが明確に違うことが判明しました。
中でも、クロストリジウム・ブチリカム(C. butyricum)という細菌は、笹シーズンに比べ、タケノコシーズンに著しく多くなっていました。
C. ブチリカムは、主要な代謝物として短鎖脂肪酸の一種である「酪酸」を作り出します。
実際、タケノコシーズンの糞便からは、脂肪酸(酪酸と酢酸)が多分に見つかりました。
笹には脂肪分がほぼありませんが、タケノコにはタンパク質と炭水化物が含まれています。
パンダはタケノコシーズンに脂肪をたくさん作って蓄えることで、痩せるのを防ぐのみならず、太りやすくしていたようです。
チームは、腸内細菌の影響をさらに確かめるため、ある実験を行いました。