465日間割れなかったシャボン玉の物語
いかにして割れる原因となる水の落下と蒸発を防ぐのか?
リール大学の研究者たちはその答えを、水とプラスチックの微粒子混ぜた「ガスマーブル」と呼ばれる特殊な泡に、グリセロールを加えることで実現しました。
グリセロールを加えることで水の蒸発が防がれるだけでなく、グリセロールは空気中から水分を吸収することが可能なため、泡本体への持続的な水分補給が実現しました。
またプラスチックの微粒子は界面活性剤の代りとして安定性を提供すると共に水分子に対する吸着能力を生かして、全周囲での液体層の厚さを維持します。
研究者たちはこの3つの材料(水・グリセロール・プラスチックの微粒子)を適度な比率で混ぜ合わせることで、最終的に泡(ガスマーブル)の寿命を465日間まで延長させることに成功しました。
もっとも界面活性剤の代りに固体状のプラスチックの微粒子がちりばめられたことで、泡(ガスマーブル)は手で持ったり転がすことができるほど強固なものになっています。
また通常のシャボン玉が弾けるようにして消滅する一方で、グリセリンとプラスチック粒子を混ぜた泡は、砂の城が崩れるようにして崩壊します。
しかし、水をベースにした泡の一種である事実は変っていません。
液体を使って頑丈な球体を作るだけならばガラスを使えばすむ話ですが、あえて蒸発する水をベースにした泡づくりに挑戦したことに意味がある……のかもしれません。
なお今回の研究では追加の試みとして上の図のように、金属のフレームの間に同じ材料からなる「泡の膜」を378日間維持することにも成功しています。
これらの研究結果が人類の発展にただちに影響を与えることはないかもしれませんが、最長寿命の水の泡を作り出そうとする研究者たちの全力の取り組みは、泡を愛する人々の記憶に「465日間割れなかったシャボン玉の物語」として長くとどまることになるでしょう。