ハゲタカ
ハゲタカ / Credit:Pixabay
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腐肉を食べても病気にならない”清潔ハゲ”な怪鳥「ハゲタカ」

2022.02.13 12:00:55 Sunday

頭だけ羽毛がなく、ハゲている鳥『ハゲタカ』。見た目にインパクトがあるこの怪鳥ご存知でしょうか?

『空から数羽舞い降りて来て、死肉に群がる』という少し怖いようなイメージを持たれている方も多いかもしれません。

見た目やイメージが衝撃的なハゲタカですが、実はそれにも理由があります。

まず、頭頂部に羽毛が無い理由は、死肉に顔をつっこむ際に顔を汚さないためなんです。

汚さない=悪い病原菌の増殖を防げる=病気にならないよう清潔にしている、ということです。機能的な『理由ある清潔ハゲ』だったのですね。

他にも、ハゲタカには死肉を食べても病気にならない理由があります。

今回はその秘密に迫ります。

How Can Vultures Eat Rotting Flesh Without Getting Sick? https://www.scienceabc.com/nature/animals/how-can-vultures-eat-rotting-flesh-without-falling-sick.html Microbes help vultures eat rotting meat, Ewen Callaway(PDF) https://www.nature.com/articles/nature.2014.16345.pdf?origin=ppub Feeding ecology of Gyps species of vultures in captivity, Dipankar Lahkar(PDF) https://www.researchgate.net/profile/Dipankar-Lahkar/publication/334114283_Feeding_ecology_of_Gyps_species_of_vultures_in_captivity/links/5d17b863299bf1547c892a08/Feeding-ecology-of-Gyps-species-of-vultures-in-captivity.pdf

強酸性の消化液が病原菌を溶かす

ハゲタカの顔のアップ
ハゲタカの顔のアップ / Credit:GRIFFUN VULTURE,LIBRESHO

一番の理由は胃酸?

スカベンジャー(腐肉食動物)であるハゲタカが病気にならない一番の理由は、『強酸性の胃酸が、病原菌を殺すため』と考えられています。

また、ハゲタカは食事中に、自身の脚周辺に排泄をします。

糞尿にも強酸が混ざっているため、これで死肉に浸かった脚や周囲の環境(牧草など)を消毒しているのです。

周囲に病気が蔓延することまで、防いでくれているんですね。

こうして、サルモネラ菌、コレラ菌、クロストリジウム菌、炭疽菌、狂犬病ウイルスなど、死に至ることもある重篤病の原因になる病原菌を弱体化させています。

ハゲタカには強力な胃酸があり、それが病原菌を弱体化させる
ハゲタカには強力な胃酸があり、それが病原菌を弱体化させる / Credit:パブリックドメインQ

ハゲタカの胃酸の力は?

ところで皆さん、私達人間の胃酸の酸性度合いはご存知でしょうか?

pH7以下は酸性、pH7が中性、pH7以上をアルカリ性と表しますが、人間とハゲタカの胃酸のpHを比べると次のようになっています。

人間の胃酸:pH2(弱酸性)

ハゲタカの胃酸:pH0.2(強酸性)

pH0.2というと、塩酸と同程度の強い酸性です。それが胃酸だった場合、どれくらいの威力があるのでしょう?

例えば、私たち人間がフライドチキンの骨を飲み込んでしまったとしましょう。

これを瞬時に胃酸で丸ごと溶かすことはできませんよね?

しかし、ハゲタカの胃酸くらいの強酸性ですと、『コラーゲンというタンパク質』が主成分である骨は丸ごと溶かすことができます。

また、酸性水溶液に弱い金属(鉄鋼や鉛)ならば、時間を掛ければ溶かすことができるでしょう。(参考:「水よう液で金属をとかす」(NHK))

もし死肉に弾丸(鉛玉)がささっていても平気で溶かしてしまうかもしれません。

健康な骨と骨粗しょう症の骨
健康な骨と骨粗しょう症の骨 / Credit:看護roo!

多くの病原菌のメインの構成成分もタンパク質であるため、ハゲタカはそれらを胃酸で強力に溶かすことができるのです。

もし私達が、ハゲタカの真似をして、大幅に消費期限の切れた食品を食べたらどうなるでしょう?

おそらく、取り込んだ病原菌はそのまま身体の中で生き続けてしまい、腹痛などの病気になってしまうでしょう。

慣れ親しんだ食習慣は、変えるべきではないようですね。

特殊な免疫系、耐性、共生システム

病原菌と共存?

そんな強酸性の胃酸を持つハゲタカですが、それだけでは説明ができないこともあります。

ハゲタカの胃や腸などの消化器官には、死滅していない病原菌が発見されたのです。

溶かすことに失敗して、生きたままだったのでしょうか?

詳細は解明されていませんが『胃酸での分解が失敗した』とは考えられていません。

現在は『病原菌に対抗する何らかの免疫耐性システムがあり、病原菌と共生(=体内にいても病気にならない)できるようになっている』と考えられています。

免疫のイメージ
免疫のイメージ / Credit:いらすとや

例えば、生物の身体に何か病原菌が入ってきた場合、生物は『抗体』というものを作って、病原菌に対抗します。

抗体は抗原(病原菌)に、鍵と鍵穴のように、ピッタリとくっ付きます。

その後、抗原を分解するなどして、病気を発症できない状態にします。

ハゲタカは、このような『抗体を作る仕組み』を強い病原菌に対しても持っている、もしくは特殊な腸内細菌(毒素を無毒化するような)を飼っている等と考えられています。

食習慣の異なる生物では、腸内フローラも異なっていることが明らかになってきているため、ハゲタカも例外では無いかもしれません。

仲間とワクチン交換?

スカベンジャー仲間でもあるハイエナやライオンも同様ですが、仲間、群れという社会性も免疫獲得に貢献しているようです。

なんと、仲間でワクチンを交換し合っている説があります。

腕に子供注射を与える医師
腕に子供注射を与える医師 / Credit:freepik

しかし、そもそもワクチンとは何でしょうか?

病気になる前に打ちますか? なった後に打ちますか?

特殊な場合(暴露後免疫)を除き、基本的には”病気になる前”に打つのではないでしょうか。

これは、抗原(病原菌)が体内に侵入してきて病気になる前に、抗体という戦士を用意しておくためです。

ワクチンとは、実は弱い病原菌(もしくはその病原菌を作る遺伝情報物質)です。

強く発症しないよう弱毒化されている病原菌、もしくはそれを作る遺伝情報物質(mRNA)を体内に入れ、 病原菌(抗原)に対抗できる抗体を体内で作らせているのです。

そのため、『ワクチンを打ったからといって病気にならないわけではないですよ』と医者に言われ、混乱する方もいらっしゃるかもしれませんが、これはワクチンが抗原(病原菌)の侵入を防ぐものではないためです。

しかし、ワクチンを打つと病原菌が入って来た後に戦う戦士(=抗体)が体内に作られるため、『病気になっても症状が楽!』『楽過ぎて、病気になっていないように感じる!』ということなんです。

スカベンジャー達は、群れで行動したり、毛繕いをし合う、寄り添って同じ死肉を食べるなどすることで、お互いの身体に付着した病原菌を少しずつ交換することがあるようです。

これが天然のワクチンになっている、と考えられています。

毛づくろいする猿。これが病原菌の交換になっている。
毛づくろいする猿。これが病原菌の交換になっている。 / Credit:Free photo

スカベンジャーのこの免疫システムを解明できれば、他の動物も病原菌に打ち勝つことができるかもしれません。

もっと言えば、死に至らしめるような病原菌に対するワクチンを開発できるかもしれません。

また、サバンナのスカベンジャー達は『掃除屋』と呼ばれるくらい、環境を清潔に保つことに貢献しています。

彼らのイメージが変わった方もいるのではないでしょうか?

私達は、自分達の身体に合った現在の生活様式(食習慣など)を変えないようにしつつ、ハゲタカの働きに感謝すべきかもしれませんね。

【編集注 2022.02.21 09:45】
記事内容に一部誤りがあったため、修正して再送しております。

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