コウモリ最強の超音波探知能力をいかに攻略するか
コウモリとガの生存競争は、両者が交互に新たな技術を編み出すという流れではありません。
むしろ、コウモリが最初に獲得してしまった強大な能力を、ガがいかに乗り越えるかというものでした。
コウモリが獲得したのは超音波を利用した「エコロケーション (反響定位)」という能力です。
エコロケーションとは、超音波を出して、その反射(エコー)を感じ取ることで周囲の情報を得るという技術です。
これにより、コウモリは環境内における自分の位置と周囲の事物との相対的な速度、獲物の居場所などを高精度で把握できるようになりました。
これはイルカも利用していることが知られていますが、人間もソナーやレーダーという軍事技術として利用しています。
超音波によるエコーロケーションを獲得したおかげで、コウモリは他の空飛ぶ捕食者にはできない狩りを実現しました。
視覚を必要としないので夜間に狩りができ、夜行性の昆虫をねらって食べる機会を得たのです。
これに対し、コオロギ、クサカゲロウ、キリギリスなどは為すすべもありませんでした。
しかしその中で、ガはコウモリの超音波に対して、並外れた適応力を発揮させたのです。
耳をよくする&超音波を妨害する
まず、多くのガは、コウモリの音に敏感に反応する聴覚を進化させました。
これにより、コウモリの接近をいち早く察知して、茂みに隠れたり、飛び去ったりといった回避行動が取れます。
また、コウモリに「毒がありますよ」と知らせるため、自ら超音波を出すよう進化した種もいます。
毒のあるガがコウモリに聞こえるような超音波を出せば、彼らはその超音波を出すガを「嫌な味」と結びつけて学習し、狙わなくなるのです。
それから種類によっては、コウモリのエコロケーションを「妨害」することもできます。
コウモリのエコロケーションのタイミングに重ねるように自ら超音波を発することで、コウモリを混乱させ、ターゲットへの到達を困難にさせるのです。
しかし一方で、ガの中には耳を持たなかったり、超音波を出せない種もたくさんいます。
では、そうした種はどのような対策を取っているのでしょうか?