「コウモリvsガ」の熾烈な生存競争とは
「コウモリvsガ」の熾烈な生存競争とは / Credit: jp.depositphotos
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「コウモリとガ」の進化がまるで軍拡競争のようになっていた (2/2)

2022.02.23 Wednesday

前ページコウモリ最強の超音波探知能力をいかに攻略するか

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無敵のエコロケーション、破れたり?

耳のよさや超音波の妨害は、危機が迫っているときのみ使う、いわば能動的(アクティブ)な防御能力です。

しかしそれができないガは、近くにコウモリがいるか否かにかかわらず、常に機能する対策、いわば受動的(パッシブ)な防御能力を発達させます。

代表的なものは主に2つ。

1つ目は「音響カモフラージュ(acoustic camouflage)」です。

たとえば、タコが岩に溶け込んだり、昆虫が葉っぱにそっくりだったりする視覚的カモフラージュがありますが、これはその音響バージョンになります。

具体的には、翅(はね)や体をおおう鱗粉を進化させ、エコロケーションの音エネルギーを吸収するのです。

その結果、コウモリが受け取るはずのエコーが減少し、ガの居場所が特定できなくなります。

しかも、鱗粉はそれぞれの音波に対して、微妙に異なる周波数で振動します。

そのため、コウモリが狩りに使う11〜212キロヘルツのすべての周波数の音を吸収できるのです。

左側が音の吸収率を示したもの(黒い部分は完全に吸収され、赤いほど反射率が高い)
左側が音の吸収率を示したもの(黒い部分は完全に吸収され、赤いほど反射率が高い) / Credit: Thomas Neil and Marc Holderied(University of Bristol, 2021)

2つ目は「音響デコイ(acoustic decoy)」です。(※decoy=おとり)

これは、魚や蝶に見られる体模様に相当します。

具体的には、捕食者の攻撃を、頭などの致命的な部位から、ヒレや翅の先端といった命に別状のない部位にそらす機能です。

ガの場合、翅の先端にある細長いねじれた構造物がおとりになります。

種によっては、後翅が非常に細長く伸びており、先っぽがねじれた形をしています。

円で囲んだ部位が「おとり」
円で囲んだ部位が「おとり」 / Credit: University of Bristol(The Conversation, 2022)

先行研究によると、コウモリはガの本体よりも、おとり部分を攻撃する傾向にあることがわかっています。

おかげで、たとえコウモリに襲撃されても、生き延びられる確率が高くなるのです。

以上のようなガの防衛手段は次々と発見されており、エコロケーションへの対抗策がまだ豊富にあることを伺わせます。

現在のところ、両者の生存競争はガの方に軍配が上がっているようですが、コウモリもエコロケーションの種類を変えたりと奮闘しています。

コウモリとガの生き残りをかけたバトルが奇しくも、生命の秘めたる潜在能力を開花させているのです。

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「コウモリとガ」の進化がまるで軍拡競争のようになっていた (2/2)のコメント

蝙蝠傘

よくまとめられていて記事の内容はとても面白いのですが、虫を捕食しない果実食性のコウモリ(fruit bat)の写真をトップ画像に使うのは誤解を招く(記事の内容にそぐわない)と思います。食虫性コウモリの写真を掲載して欲しいです。

蝙蝠傘

おまけに、昼行性のオオコウモリ類(fruit bats)は超音波によるエコロケーションをしないで視覚に頼って飛ぶのでは?
その写真に付けられた「無敵のエコロケーションをどう破るか?」というキャプションは、適切ではないと思います。

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