「ウクライナ東部」が起源の可能性も
ウーライトの分析上、原産地は北イタリアと見て間違いないようですが、一方で、ヴィレンドルフから直線距離で1600キロ以上離れたウクライナ東部も可能性があるといいます。
そこの岩石サンプルは、イタリア産ほど明確に適合していませんが、他のサンプルよりは良好な結果でした。
また、同地周辺でもヴィーナス小像が見つかっており、やや新しいですが、ヴィレンドルフのものと形がよく似ています。
さらに、遺骨の遺伝子分析によると、中欧と東欧の人々がこの時期に互いにつながっていたことがわかっているのです。
ヴィーナス像がウクライナからオーストリアに入ってきたのか、それとも北イタリアからオーストリアを経由して、ウクライナに流れたのかはわかりません。
研究主任のゲルハルト・ウェーバー(Gerhard Weber)氏は「ヴィレンドルフのヴィーナスの物語はまだまだ続くかもしれない」と話します。
この時期にアルプス山脈にいた初期人類の存在や、その移動力に焦点をあてた研究は、数えるほどしかありません。
ウェーバー氏は「今回の成果も踏まえつつ、アルプス地方の人類史を明らかにしていきたい」と述べています。