実験で「サメは眠る」ことを確認!
本研究では、ニュージーランド沖に生息し、休息時間を持つことで知られる「ナヌカザメ(学名:Cephaloscyllium isabellum)」を対象に調査。
野生のナヌカザメ7匹を一時的に捕獲し、自然光の入る大型水槽に入れて、睡眠の兆候を調べました。
実験開始までの2週間はイワシを与え、直前の48時間は何も与えず、エネルギー吸収後の状態を観察します。
過去の同様の実験では、眠っているように見えるサメに軽い電気ショックを与えて、反応を見ていました。
今回はそのほかに、アクリル製の呼吸測定器(acrylic respirometry chamber)を用いて、サメの代謝率と酸素濃度を24時間にわたって測定しています。
その結果、7匹すべてで休息時に酸素濃度が一貫して低下していたのです。
さらに、電気ショックに対する反応が鈍くなるだけでなく、代謝率も一様に低下していました。
このことから、ナヌカザメの「5分以上の休息は明らかに睡眠状態に入っている」と結論されています。
また、休息中のナヌカザメは目を閉じたり、体を水平に保つ傾向にありました。
ただし、休息中に目を閉じるサメが日中に多く、これは睡眠状態そのものより、自然光などの外的要因が関係しているとも考えられます。
その証拠に、夜間に熟睡していたサメの38%が目を開けたままだったとのこと。
なぜ泳ぎを止めて眠れるのか?
ナヌカザメが泳ぎをやめて眠れる理由について、研究チームはこう説明します。
「ナヌカザメが長時間動かずにいられるのは、顔の筋肉のポンプ機能によって、じっとしていながらも、エラに酸素を含んだ水を取り込めるからです。
ホオジロザメのような他の種は、このポンプ機能を持たず、前方遊泳によって酸素を含んだ水を口からエラに流し込まなければなりません」
ナヌカザメがその場で休息できるのは、顔の筋肉のおかげなのです。
では、ポンプ機能がなく、泳ぎ続けなければならないサメは、死ぬまで眠れないのでしょうか?
これについて、チームは「もし睡眠がすべてのサメに共通するなら、ナヌカザメとは別のやり方で眠っている可能性がある」といいます。
たとえば、1970年代の研究で、小型のアブラツノザメ(Squalus acanthias)の遊泳を制御するメカニズムは、脳ではなく脊髄にあることが判明しています。
つまり、アブラツノザメは意識(脳)でなく、無意識(脊髄)の反応として泳ぎ続けられるということです。
ここから、サメ自体は眠っていても、体が泳ぎを続けることで、エラに酸素を取り込めると考えられます。
しかし、サメの睡眠についてはまだ謎が多く、種によって眠り方もさまざまです。
研究チームは今後、「脳活動の変化や他の生理的指標にも注目して、サメの睡眠のあり方を解明していきたい」と述べています。