300m以内に緑地があると、脳卒中リスクが16%減
虚血性脳卒中(IS)と環境因子との関連性はこれまで、証拠が限られており、一貫性がありません。
そこで研究チームは今回、住宅周辺の緑地、大気汚染物質への曝露、および脳卒中の発症率の関係を調査しました。
(虚血性脳卒中:動脈がつまり、脳に十分な血液と酸素が供給されないことで発症する、脳組織の部分的な壊死のこと)
スペイン北東部のカタルーニャ地方における18歳以上の健康な男女、のべ350万人を対象に、公的医療システムから取得したデータを分析しました。
追跡期間は、2016年1月1日から2017年12月31日までで、調査ポイントは以下の3つです。
・自宅から緑地までの距離
・二酸化窒素、PM2.5、ブラックカーボンなどの大気汚染物質への曝露率
・虚血性脳卒中(IS)の発症率
その結果、自宅から300m圏内に緑地がある人は、そうでない人に比べ、脳卒中の発症率が16%低いことが判明したのです。
データは、緑地が脳卒中リスク低減の直接の原因であることを示してはいませんが、両者の関連性はさらなる調査を保証するほど強いものでした。
緑地などの自然空間は、ストレスを軽減したり、運動する場所を提供したり、メンタル面の健康を向上させたりと、様々な方法で健康を増進させます。
今回の結果から、緑地は、脳血管障害の予防にも何らかのメリットがあると考えられます。
汚染物質への曝露量も関係
同時に、大気汚染物質の多い地域に住んでいる人は、脳卒中のリスクが高くなる傾向が示されました。
これまでの研究でも、汚染物質への曝露量が多いほど、脳卒中リスクが高くなることがわかっています。
たとえば、二酸化窒素が、1立方メートルあたり10マイクログラム増加するごとに、脳卒中のリスクは4%上昇します。
研究主任の一人で、環境疫学者のキャサリン・トン(Cathryn Tonne)氏は「二酸化窒素はおもに、道路交通によって引き起こされる汚染物質である」と指摘。
「ですから、二酸化窒素による健康被害を避けるには、自動車の利用や交通量を減らす大胆な対策が必要でしょう」と話します。
緑地が自宅の近くにあるエリアは、都市部のように交通量が少なく、そのおかげで汚染物質への曝露量も減っているのかもしれません。
また、緑地、汚染物質、脳卒中リスクの関連性は、年齢や性別、喫煙習慣、社会・経済的な要因などを考慮しても、なお根強く残っていました。
研究チームは、次のように述べています。
「今回の結果から、緑地の少ない都市部に住むことを選択した場合、健康という点で大きな代償を払っていることが示唆されました。
私たちは、ただ住むだけで病気のリスクを高めることのないような、持続可能な町や都市づくりに取り組む必要があるでしょう」
春先に引越しを考えている方は、近くに緑地がある地域を選ぶと良いかもしれません。