「水辺で過ごしていた説」vs「水中を泳げた説」、どちらが正しい?
すべての生命はもともと海で誕生し、次いで陸に進出しました。
しかし、陸に上がった脊椎動物の中には、再び水中生活に戻るか、半分ほど適応したグループがたくさんいます。
たとえば、クジラやアザラシは完全に水中暮らしに戻りましたし、カバやカワウソ、ビーバーなどは半水生です。
鳥類ではペンギンや鵜(ウ)、爬虫類ではワニ、ウミイグアナ、ウミヘビなどがあげられます。
その中にあって、非鳥類型恐竜(鳥類に分岐しなかった恐竜)だけが、長い間、水棲動物を持たないグループとされていました。
ところが、2014年に見つかった新種のスピノサウルスの骨格により、この考えが一変します。
その標本は、鼻孔が引っ込んでいて、後ろ足が短く、パドルのような足とヒレのような尾を持っていました。
これらはすべて、「水中生活に適応した生物」の特徴です。
それ以前にも専門家は、ワニのような細長い口先と、お腹の中に見つかった魚の骨から、スピノサウルスが水辺で暮らしていたことを知っていました。
しかしその時点では、水辺にたむろしていたか、せいぜい浅瀬に入っていただけと考えられていたのです。
これ以降、専門家の意見は、スピノサウルスが「水辺で過ごしていた説」と「水中を泳げた説」とで二分されてしまいます。
一体、どちらの説が正しいのか。
今回、研究チームがとったアプローチと、その結果を次に見ていきましょう。